2009年07月06日

[ほぼ日刊日々是映画] vol.2568 ★ かけひきは、恋のはじまり

=================================================2009/7/6==
                        -vol.2568--
  ほぼ日刊 日々是映画         発行:cinema-today
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2568号です。

ご無沙汰でした!
まぐまぐのメンテナンスも無事終わりまして、再開です。
まだちょっとわかりにくいところがあるんですが、
まあ大丈夫でしょう。

先週は沖縄に行きましたが、昨日一昨日と郡山に行ってきました。
あまり特色のあるところではありませんでしたが、結構街中に
温泉があったりして、その温泉はなんだかよかったです。

郡山名物といえば“ままどおる”↓これはおいしかったです。
http://www.chuokai-fukushima.or.jp/ksk/mamador/seihin.html

今日の映画は『かけひきは、恋のはじまり』です。

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■ 今日の映画
 かけひきは、恋のはじまり

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■ 今日の映画 − かけひきは、恋のはじまり

<1行コメント>
30年代スクリューボール・コメディ風、その雰囲気はいいが…


--cinema2467------------

 かけひきは、恋のはじまり

 Leatherheads
 2008年,アメリカ,113分

-----------------------

<キャスト&クルー>

監督 ジョージ・クルーニー
脚本 ダンカン・ブラントリー
   リック・ライリー
撮影 ニュートン・トーマス・サイジェル
音楽 ランディ・ニューマン

キャスト ジョージ・クルーニー
     レニー・ゼルウィガー
     ジョン・クラシンスキー
     ジョナサン・プライス
     ピーター・ゲレッティ

<評価>

☆☆☆(満点=5)


<プレビュー>

 1925年アメリカ、大学のフットボールは人気が高く、従軍して勲
章を受けた経験もあるカーターは時代のスターになっていた。一方
でプロフットボールは人気がなく、次々とチームがつぶれていた。
ドッジがキャプテンを務めるブルドックスも存亡の危機にあり、ドッ
ジはカーターをプロにスカウトしようと考える…
 30年代のスクリューボールコメディのテイストのラブコメ。雰囲
気はいい。



レビュー

 20年代を舞台にした30年代風のラブコメ、基本的には30年代に流
行したスクリューボール・コメディを現代的な感覚で作りこんだと
いう感じだ。モチーフが黎明期のプロフットボールの世界というの
はアメリカ人には馴染み深いのかもしれないが、日本人にはちょっ
とわかりにくい。日本のプロ野球がその創世記には六大学野球より
人気がなかったなんていうのと同じ感覚なのかもしれない。

 それはともかく、この30年代の雰囲気というのはなかなかいい。
ジョージ・クルーニーもレニー・ゼルウィガーもその昔っぽさにう
まくはまっている。30年代といえばもちろん白黒だけれど、その雰
囲気をカラーにしたらこんな風になるだろうし、レニー・ゼルウィ
ガーの年増な感じというのもいかにも“美女”っぽくていいのだ。

 しかし、この映画がいいのはそこまでという気がしてしまう。プ
ロットはまったくもって平凡だし、展開の仕方も見え見えでまどろっ
こしい。ヒーローに祭り上げられたカーターが実はヒーローなんか
じゃなく、それを暴露するかどうかというのが一つの鍵になってい
るのだけれど、それがどうしたと思えてしまうし、その結論を引っ
張ったところで特に面白いドラマが生まれるわけではない。

 私がむしろ面白いと思ったのはCCというエージェントで、プロ
スポーツの黎明期にはやり手だけれど欲深いエージェントなんての
が登場して引っ掻き回すという辺りは面白いと思ったのだが、その
辺りは意外にさらりと流されてしまって膨らまなかったのが残念だっ
た。

 まあしかしラブコメなんてそんなものか。スクリューボールコメ
ディだって今見ればすごいと思うけれど、昔は本当にスターを見て
ちょっと笑ってちょっとわくわくして、そんな娯楽に過ぎなかった。
複雑なプロットや示唆深い含蓄なんてものは必ずしも必要ではなかっ
た。

 そういう意味ではこの作品はこれでいいのかもしれないとも思う。
ただ、監督ジョージ・クルーニーが目指したものはなんだったのか
というのがちょっと気になるところだ。わざわざ20年代を舞台に30
年代風の劇を撮ったのはただそういう雰囲気が好きだからなのだろ
うか? 私の勝手な解釈では彼はただそれが好きなのだと思う。そ
してそれを今の観客に見て欲しいのだと思う。

 それが結局狙いのわかりにくさにつながってしまったようにも思
えるのだが、悪い映画ではない。邦題はどうかと思うが、ジョージ・
クルーニー主演のラブコメだということを表に出さないと客も来な
いだろうから、仕方がないのかな。

 いろいろな意味でなかなか微妙な映画だ。



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<今日の作品:かけひきは、恋のはじまり>

 『かけひきは、恋のはじまり』
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  楽天で借りる→http://tinyurl.com/p4lwko


<今日のお勧め>

 ジョージ・クルーニー

 『グッドナイト&グッドラック』
  http://tinyurl.com/qhv9bw

 『バーン・アフター・リーディング
  http://tinyurl.com/ot7t5w

 『ER 緊急救命室 I』
  http://tinyurl.com/po4r2c

 『オーシャンズ11・12・13 DVDお買い得パック』
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2008年06月17日

[ほぼ日刊日々是映画] vol.2311 ★ ゴッド・イン・ニューヨーク

================================================2008/6/17==
                        -vol.2311--
  ほぼ日刊 日々是映画         発行:cinema-today
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2311号です。

えー、いろいろDVDをチェックしたので、発売情報をまとめて
おきます。欲しいDVDはお早めにどうぞ。
『ノーカントリー』 8月発売
 http://tinyurl.com/5f7dqa
『潜水服は蝶の夢を見る』 7月発売
 http://tinyurl.com/58bccs
『再会の街で』 6/25発売
 http://tinyurl.com/5c3cko
『フローズン・タイム』 7月発売
 http://tinyurl.com/68zcze
『帰ってきた東宝ゴクラク座 DVD-BOX』 7月発売
 http://tinyurl.com/5pezzs
『佐藤真 映画の仕事』 発売中
 http://tinyurl.com/66dv3h
『アート オブ 市川崑 BOX』 復刻6/27発売
 http://tinyurl.com/5bssco

雑多になってしまいましたが、オススメは最後の市川崑BOXです
かね。『黒い十人の女』を含む大映時代の5作品+インタビュー
です。

今日は『ゴッド・イン・ニューヨーク』という作品。
未公開ですが、B級というわけではなく、いい作品です。


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■ 今日の映画
 ゴッド・イン・ニューヨーク

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■ 今日の映画 − ゴッド・イン・ニューヨーク


--cinema2235------------

 ゴッド・イン・ニューヨーク

 God has a Rap Sheet
 2003年,アメリカ,118分

-----------------------

<キャスト&クルー>

監督 カメル・アメッド
脚本 カメル・アメッド
撮影 トム・ニエッロ
音楽 カメル・アメッド

キャスト ジョン・フォード・ヌーナン
     ボンズ・マーロン
     ウィリアム・スミス
     ピーター・アベル

<評価>

☆☆☆☆(満点=5)


<プレヴュー>

 ニューヨークのとある拘置所、太った初老の男が入っている監房
に8人の男達が入ってくる。黒人、白人、ユダヤ人、ムスリム、ア
ジア人などニューヨークを象徴するかのように多様な彼らは最初は
無視しあうが徐々にいがみあるようになる。そんな中、太った男が
いきなり自分は神だと名乗る…
 コメディグループ“ジャーキー・ボーイズ”の一員だったカメル・
アメッドの初監督作品。密室劇で見事にニューヨークという街を描
いた快作。


<レビュー>

 「お前なんか怖くない」という奴に限って相手のことを怖がって
いる。怖がっていないと言葉に出すことで自分を奮い立たせ恐怖心
を後景へと押しやろうとするわけだ。
 この作品にはたびたびこの「お前なんか怖くない」という言葉が
飛び出す。拘置所という密室に押し込められた9人の男、ホームレ
スらしい初老の男、黒人とプエルトリカンのふたり組、刺青だらけ
の白人男、イタリア系のマッチョ、黒い服に身を包んだユダヤ人、
アジア人とイギリス人のふたり組、アラブ系のタクシー運転手。彼
らの間にはあまりの多くの隔たりや壁がある。ニューヨークは“人
種の坩堝”とよく言うけれど、実はニューヨークと言うのはたくさ
んの人種が混在するだけで、決して交じり合ってはいない。隣に住
んでいたとしても人種や民族や宗教が違えばそれは他者であり、決
して分かり合うことの出来ない別世界の住人なのだ。その常に他者
に囲まれた生活が彼らの恐怖心を育み、その恐怖心は攻撃性へと変
化する。
 この映画の舞台となる拘置所はまさにニューヨークの縮図である。
狭い空間に押し込められた他者たち、彼らは自分の縄張りを確保す
るためにまず手近な敵を攻撃する。そして彼らの区別は主に人種と
宗教から生じているがために、その攻撃は常に差別の問題につなが
る。白人と黒人、ユダヤとムスリム、ムスリムと黒人… そして差
別への意識は他者との間の壁を厚くしてゆき、理解への道のりはさ
らに遠ざかる。
 彼らはとにかく言い争い、一触即発の空気になる。しかし彼らの
言っていることの一つ一つは間違っていない。誰もが自分を正当化
するための事実を知っていてそれを使う。しかし、誰もが自分の正
当性をめいっぱい主張してしまったら、それは誰の主張がより正し
いかと言う順位争いになり、それは水掛け論に堕してしまう。その
結果彼らの誰もが不満を抱えたまま黙り込み、状況は元に戻ってし
まう。

 ただ、ニューヨークの縮図たる拘置所で男達が言い争っているだ
けならば、ただただそれが繰り返されるだけなわけだが、ここでは
“神”と名乗る老人がいて、彼らに金言を与える。見た目はホーム
レスでものすごい臭いのだが(笑)、その言葉には誰もが認める理
知がある。彼が神だとはもちろん誰も信じないのだが、その老人の
言葉は彼らの急所を突く。誰もが自分のことは棚に上げながら、他
者を非難するばかりの言い争い、それはまったく不毛であり、ほん
の少しでも相手のことを理解しようとすれば生じない無駄な争いな
のだ。彼らはこの“神”の言葉によってそのことに気づく(しかし
またすぐに忘れてしまう)。
 彼らがすぐに忘れてしまうのは、相手のことを理解しようとすれ
ばいいということにみな気づいてはいるのだけれど、そのように譲
歩することによって相手につけ込まれるのではないかという根強い
恐怖感に起因する。誰かがその一歩を踏み出せば、和解は意外と近
くにあるのだとそんなメッセージをこの物語は放つ。
 この物語にそれ以上の解釈は必要ない。“神”はいたのかいない
のか、“神”はいったい誰だったのか、それは謎として物語の鍵に
なってはいたけれど、その答えは必要ない。それが謎のまま終わる
こと自体がこの作品にとってのひとつの答えなのだ。神がいようと
いまいと、神を信じようと信じまいと、世の中をコントロールする
のは人間なのだ。

 こう書くと、難しい内容の映画のように感じるけれど、実際は他
愛もない会話からなる物語であり、哲学的であるよりは日常的な作
品だ。この作品はすべてにおいて今のアメリカ(あるいはニューヨー
ク)をリアルに描いた描写であると思う。複雑な社会を人種や宗教
といった特定の問題に一面化するのではなく、複雑なものを複雑な
まま描くことで、さまざまな問題に通呈する根っこのようなものを
掘り出すのだ。
 ただ、女性は登場しないので、その点では片手落ちかも知れない。
しかし、ここに更に女性を登場させたら、問題の複雑さは2倍では
なく2乗になって、映画はおそらく8時間くらいになり、誰も理解
できなくなってしまうだろう。だからこれでよかったのだろうが、
別の作品でまた女性の場合についても描いて欲しいと思う。




□ ヒビコレリンク

 『ゴッド・イン・ニューヨーク』公式サイト
  http://www.roundtablecinema.com/god/



□ DVD今日の買い!

<今日の作品:ゴッド・イン・ニューヨーク>

 『ゴッド・イン・ニューヨーク』
  http://tinyurl.com/4yqx8d


<今日のお勧め>

 ニューヨークという名の映画

 『ニューヨーク1997』
  http://tinyurl.com/5bowgk

 『ニューヨーク・ニューヨーク』
  http://tinyurl.com/5bfsju

 『僕のニューヨークライフ』
  http://tinyurl.com/6qb4fe

 『ニューヨーク・ストーリー』
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2008年06月16日

[ほぼ日刊日々是映画] vol.2310 ★ 鎮花祭

================================================2008/6/16==
                        -vol.2310--
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2310号です。

先日セールでmionのサンダル↓をとても安く買えました。
http://tinyurl.com/6rwtvn
もうすっかりサンダルの季節ですが、いまさらcrocsというのも
なんなので、よかったです。crocsのように軽くはないですが、
アウトドア用なので、滑らないし足にもフィットします。
なんと言ってもいいのはクロッグですが。
http://tinyurl.com/6zdvpn

サンダルといえば、はいているだけで下半身の引き締めエクササ
イズができるfitflopというのがはやっているそうです。
http://tinyurl.com/5je2zq
見た目も悪くないし、普段の生活でエクササイズが出来るなら
いいかもしれません。残念ながら男性用はないようですが…

今日の映画は『鎮花祭』、60年の日本映画です。


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■ 今日の映画
 鎮花祭

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■ 今日の映画 − 鎮花祭


--cinema2234-----------

 鎮花祭

 1960年,日本,87分

-----------------------

<キャスト&クルー>

監督 瑞穂春海
原作 丹羽文雄
脚本 松浦健郎
撮影 中川芳久
音楽 池野成

キャスト 若尾文子
     根上淳
     吉川満子
     山内敬子
     川崎敬三

<評価>

☆☆☆(満点=5)


<プレビュー>

 BGの朝比奈公仁子はテレビ・ディレクター古田の目に留まりC
Mガールになることになり、古田のアパートの部屋で演技の個人教
授を受けることに。公仁子の兄で父の工場を継いだ正方は公仁子の
友人で家に下宿している陽子を嫁にもらうことにするが、陽子は新
婚初夜から夫を拒み、正方は不満を募らせる…
 若尾文子が小悪魔的なヒロインを演じた大映らしいどろどろとし
ドラマ


<レビュー>

 日本映画の黄金期といわれる昭和30年代、日本には、松竹、東宝、
日活、大映、新東宝という5つの映画会社があった。大まかに言え
ば、松竹は小津に代表されるホームドラマ、東宝は社長シリーズな
どのサラリーマン喜劇、日活は裕次郎などのスター・アクションと
色分けがされていたわけていた。新東宝は昭和36年に東宝に吸収さ
れるが、昭和30年代には際物的な作品が多くなっていた。
 これに対して大映はサスペンスやメロドラマを得意とし、大手3
社よりも“大人な”作品を多く作っていた。サスペンスでもドラマ
でもどろどろとした男女関係を描くという作品の印象が強い。
 この作品はまさにそんな大映ドラマのひとつである。主人公の若
尾文子演じる公仁子はCMガールになることが決まるとディレクター
の古田に取り入ろうとする。公仁子は古田と結婚しようと考えてい
たわけだから必ずしもこれが“女の武器”を使って成り上がろうと
いう意図とはいえないわけだが、それを利用したことは間違いない。
相手の古田のほうも結婚していることは隠しながら、立場を利用し
て公仁子を誘惑する。こんな話は今でも昼ドラなんかに使われるが、
今も昔も人々の気を引いたのだろう。
 また、公仁子の友達の陽子が公仁子の兄の正方と結婚するのもよ
くある話で、松竹ならその夫婦は円満にいくのだが、大映だとその
夫婦はだいたい問題を抱えることになる。この作品では陽子が夫と
のセックスを拒むことで夫が暴力的になると同時に、外に女を作る
というさもありなんという展開、さらにその外の女というのが立場
を利用してなりあがろうとするわけだから話はややこしくなる。
 この複雑に絡み合った男女の欲望と策略がドラマを面白くしてい
く。そしてこの作品にはさらに正方の戦争経験というのが絡んでく
る。昭和30年代のドラマには戦争が影を落とすことがまだまだ多い
が、それは見る人のほとんどが戦争を経験しているからだ。戦争経
験者に対する見方も今とは異なって、この作品で正方は戦争によっ
て恐ろしい人間に変わってしまった男として描かれている。そこは
今見るとちょっと違和感を感じるけれど、今はそれだけ戦争が遠く
なったということ、ほとんどの人が戦争を経験している社会という
ものをこのような作品から想像することも出来る。

 それらのすべてをひっくるめて、この作品は昭和30年代の大映ら
しい作品といえる。ヒロインを演じる若尾文子はデビュー時に“低
嶺の花”と言われたように美人ではなく親しみやすく、リアリティ
のある女性であり、そのキャラクターがこの作品でも生かされてい
る。決して“魔性の女”というわけではないが、非常に現代的でさ
ばけている。それに対して美人という設定の陽子は古風で不器用だ。
この女性の生き方の変化というのもドラマの重要な要素になる。
 特に素晴らしい作品というわけではなく、監督の瑞穂春海も名監
督というわけではない。若尾文子は数え切れないほどの作品に出て
いるから、特にこの作品がということもない。しかしさすがは日本
映画の黄金期といわれる昭和30年代の作品だけあって、このまま埋
もれてしまうにはもったいないような作品だ。




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<今日の作品:鎮花祭>

 原作:『鎮花祭』
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<今日のお勧め>

 若尾文子に注目

 『しとやかな獣』
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 『卍(まんじ)』
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 『瘋癲老人日記』
  http://tinyurl.com/56zvvp

 『獣の戯れ』
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2008年06月14日

[ほぼ日刊日々是映画] vol.2309 ★ 二十才の微熱

================================================2008/6/14==
                        -vol.2309--
  ほぼ日刊 日々是映画         発行:cinema-today
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2309号です。

また地震ですね。
やはり地震は怖い。備えあれば憂いなし。
地震に驚いて飛び出して轢かれてしまったという方がいたとか。
轢かれてしまった人にも轢いてしまった人にも悲劇です。
地震の際の心構えをもう一度、肝に銘じておきましょう。
あわてず、あせらず、まずは出口の確保と火の始末です。
防災セットはお手元に。
http://tinyurl.com/4grl88
水の備蓄は怠りなく。
http://tinyurl.com/45m8tg

今日は橋口亮輔特集『二十才の微熱』です。


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■ 今日の映画
 二十才の微熱

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■ 今日の映画 − 二十才の微熱


--cinema2233------------

 二十才の微熱

 1993年,日本,114分

-----------------------

<キャスト&クルー>

監督 橋口亮輔
脚本 橋口亮輔
撮影 戸澤潤一
音楽 篠崎耕平
   磯野晃
   村山竜二
助監督 篠原哲雄

キャスト 袴田吉彦
     片岡礼子
     遠藤雅
     山田純世
     橋口亮輔

<評価>

☆☆☆(満点=5)


<プレビュー>

 大学生の島森はゲイバーで男相手の売春をしていた。彼はゲイと
いうわけではなかったが、無感動にその好意を受け入れていた。そ
んな彼にバイト仲間の高校生信一郎とサークルの先輩である頼子が
思いを寄せていたが、島森はそれも冷静に捉えていた…
 橋口亮輔監督がPFFスカラシップによって撮った劇場デビュー
作。袴田吉彦や片岡礼子にとってもデビュー作でぎこちなくもある
が、みずみずしくもある。


<レビュー>

 アマチュア映画作家の登竜門であるピア・フィルム・フェスティ
バルで89年にグランプリを取った橋口亮輔監督がその賞として与え
られるスカラシップによって撮り上げたデビュー作。このPFFス
カラシップ作品には、園子音の『自転車吐息』、矢口史靖の『裸足
ピクニック』、熊切和嘉の『空の穴』、荻上直子の『バーバー吉
野』、内田けんじの『運命じゃない人』などなど秀逸な作品が数多
くある。
 なかにはデビュー作とは思えない完成度の作品もあるが、橋口亮
輔のこの『二十才の微熱』は出演者もデビュー作ということもあっ
てかデビュー作らしいみずみずしさと危なっかしさがある。
 この作品で監督が描こうとしたことははっきりとしている。それ
は、男が好きでもないのに男相手に体を売る主人公の島森の無感動
さである。何に対してもいやとは言わず、誰に対しても優しく、し
かし心を開かない。彼の行動からは何も見えてこない。いったい何
を求めているのか、あるいは何を待っているのか、それはまったく
見えてこない。彼はただ周りを見回し、周りの人たちが彼に求めて
いることをやろうとする。そこには喜びも怒りも何もない。ただ無
感動に過ぎ行く日々、それが相手を傷つける。
 このキャラクターは『渚のシンドバッド』の吉田に受け継がれる。
島森はただ無感動なだけだが、吉田にはそこに思い込みとも言える
価値観が加わる。その思い込みがさらに相手を気づける度合いを増
すわけで、ある意味ではキャラクターとして洗練されていく。
 『渚のシンドバッド』とこの『二十才の微熱』は連続もののよう
に似通っている。描かれている題材は違っているが、未成熟な若者
の心を描き、それが無自覚に周囲を傷つけていくさまを描く。これ
は高校生ですでにゲイである自分を自覚し、周りに比べると成熟し
てしまった橋口亮輔が見つめた若者の姿なのだろう。彼自身、そん
な無自覚な男たちに傷つけられたのかもしれない。
 このような若者は、時代を超えて存在するし、あるいはこれは少
年から青年へと成長する若者が常にぶつかる壁なのかもしれない。
その壁を意識しないまま大人になってしまった少年がいまさまざま
な事件を起こしてしまっているのかもしれないなどとも思う。
 しかし、まあこの作品自体は社会的な視座に立ったというよりは、
身近なことを見つめた映画だ。誰もが通る青年という時期をひとつ
の視点から見る、そこから浮かび上がってくる今というものがある
のだ。

 片岡礼子がとてもいい。前半は地味な存在なのだが、ひそかに想
いを寄せるというキャラクター設定をリアルに演じているし、少し
男っぽい(おやじっぽい?)性格もしっかりと出ている。
 終盤、島森が家にやってくるシーンではとにかく喋りまくる母親
をうるさがりながらも、島森がやってきたことがうれしいという感
じをうまく演じているし、母親とのやり取りのスピード感もすごい。
 橋口監督は『ハッシュ!』で再びこの片岡礼子を使うわけだが、
ここでも非常にいい存在感を示していた。
 橋口亮輔監督の作品では女性は常に現実的で、男性はどこか浮世
離れしているところがある。まあ現実にもそういう面はあると思う
が、この監督の作品では常にそれが顕著だ。この『二十才の微熱』
と『ハッシュ!』の片岡礼子、『渚のシンドバッド』の浜崎あゆみ。
 橋口亮輔は(ゲイだからということもあると思うが)その現実的
な女性よりも男性のほうに思い入れがあるように思える。普通に見
ると現実的な女性たちのほうが魅力的なキャラクターだと思うのだ
が、監督は浮世離れした男性のほうに執着する。この作品では終盤
に自ら客として登場し、嫌なやつの役を演じる。この監督自身の熱
演は若者たちの未来を暗示し、さらに先へと物語をつなげていく。

 橋口亮輔監督はデビューから15年間でわずか4本の作品しか撮って
いないが、一本ずつ確実にレベルアップして行っている。この『二
十才の微熱』は一本の作品としてはまあまあというレベルではある
が、彼がすばらしい監督になっていく第一歩らしい作品でもある。
役者のいい演技を引き出し、自分なりのメッセージをこめ、それを
観客の問題意識や、われわれを取り巻く社会とつなげる。
 他の作品を見てからデビュー作に立ち返ると、彼のそんな変わら
ぬ姿勢が見えてくるのだ。




□ ヒビコレリンク

 『渚のシンドバッド』
  http://www.eigablog.com/article/100158109.html
 『ハッシュ!』
  http://www.cinema-today.net/0112/28p.html
 『ぐるりのこと。』
  http://www.cinema-today.net/0806/04p.html

 『裸のピクニック』
  http://www.cinema-today.net/0110/25p.html
 『空の穴』
  http://www.cinema-today.net/0111/23p.html
 『バーバー吉野』
  http://www.cinema-today.net/0508/21p.html
 『運命じゃない人』
  http://www.cinema-today.net/0610/27p.html


□ DVD今日の買い!

<今日の作品:二十才の微熱>

 『二十才の微熱』
  http://tinyurl.com/43otl3


<今日のお勧め>

 橋口亮輔

 『ハッシュ!』
  http://tinyurl.com/53oze4

 『渚のシンドバッド』
  http://tinyurl.com/4fohox

 PFFスカラシップ
 
 『裸のピクニック』
  http://tinyurl.com/436lrn

 『空の穴』
  http://tinyurl.com/3j457e

 『バーバー吉野』
  http://tinyurl.com/5z65br

 『運命じゃない人』
  http://tinyurl.com/yhjdsz


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2008年06月13日

[ほぼ日刊日々是映画] vol.2307 ★ イースタン・プロミス

================================================2008/6/12==
                        -vol.2307--
  ほぼ日刊 日々是映画         発行:cinema-today
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2307号です。

昨日もうっかりeuroを見てしまい眠いです。
しかし、ドイツ・クロアチア戦面白かったです。ヨーロッパの
代表クラスの選手はみんなあっちこっちのトップレベルのクラ
ブでやっているのでやはり実力差が小さいですね。
やはり日本の選手ももっとヨーロッパで戦わないとね。

それはともかく、今年の夏は去年ほどではないにしても暑いと
いう予想だそうです。だからなのか、寝苦しい夜対策にガーゼ
ケットなるものが売れているそうです。ガーゼとはつまりガー
ゼですが、それが5重になっていて快適だとか。
http://tinyurl.com/56huce
ガーゼはなんと言っても肌触りがいいですからね。
それに麻を加えて快適度をアップしたもの、
http://tinyurl.com/6jofrp
ベビー用のオーガニックコットン
http://tinyurl.com/5mo83m
などもあります。
エアコンなどに頼らず、涼しい夜を過ごしたいものですね。

さて今日は、明日から公開クローネンバーグの新作
『イースタン・プロミス』です。


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-------- 目次 --------

■ 今日の映画
 イースタン・プロミス

□ ヒビコレリンク

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■ 今日の映画 − イースタン・プロミス


--cinema2231------------

 イースタン・プロミス

 Eastern Promises
 2007年,イギリス=カナダ=アメリカ,100分

-----------------------

<キャスト&クルー>

監督 デヴィッド・クローネンバーグ
脚本 スティーヴ・ナイト
撮影 ピーター・サシツキー
音楽 ハワード・ショア

キャスト ヴィゴ・モーテンセン
     ナオミ・ワッツ
     ヴァンサン・カッセル
     アーミン・ミューラー=スタール
     ラザ・ジャフリー

<評価>

☆☆☆☆(満点=5)


<プレヴュー>

 クリスマス直前のロンドン、ロシア人の妊婦が病院に運ばれてく
る。子供は救えたが、母親はなくなり、助産師のアンナはその母親
が持っていたロシア語の日記をロシア人の叔父に見せる。同時にそ
の日記に挟まれていた“トランスシベリアン”というレストラン
訪ねるが、そこはロシアン・マフィアのボスの一人が経営している
レストランだった…
 クローネンバーグが『ヒストリー・オブ・バイオレンス』に続い
てヴィゴ・モーテンセンを主演に迎えたサスペンス・ドラマ。リア
ルがゆえに血なまぐさいシーンもあり、心臓には悪いかも。


<レビュー>

 クローネンバーグというとなんともどろどろあるいはぐちゃぐちゃ
としたちょっと気持ちが悪い映像を駆使した独創的なホラーやサス
ペンスである。そんな特徴がよく表れていたのは『ビデオドローム』
だったり『ザ・フライ』だったり『イグジステンズ』だったりする。
そしてそのどろどろぐちゃぐちゃしたものというのは基本的に人間
を中心とした現実の醜さを表現したものといって間違いはないだろ
う。
 そのクローネンバーグが『ヒストリー・オブ・バイオレンス』で
見せたのはどろどろぐちゃぐちゃではなく、非常にドライな暴力だっ
た。しかし、その描写はグロテスクで、暴力が人に与える痛みと恐
怖を明確に描いていた。それはどろどろぐちゃぐちゃとした気持ち
悪さとは異なるものだけれど、われわれが抱えざるを得ない現実の
醜さを描いているという意味では一貫した彼の表現であった。『ヒ
ストリー・オブ・バイオレンス』によってクローネンバーグは、現
実を幻想的なものに置き換えて描くことから、現実を現実として描
くことへと物の描き方を変えたのだと考えることができる。
 この『イースタン・プロミス』ではさらにもう一歩踏み込んで、
暴力と社会とを直接的に結びつける。『ヒストリー・オブ・バイオ
レンス』はそのタイトルの通り暴力そのものを描いたものだったけ
れど、この『イースタン・プロミス』においては暴力が社会の中に
置かれ、人がそれとかかわらざるを得ない現実の醜さを描いている。
 この作品におけるクローネンバーグの描写は不必要なほどに過剰
に見えるかもしれない。話題にもなったサウナでの全裸での格闘シー
ン、全裸の体をナイフが切り裂くそのむごたらしさはショッキング
で、R18になったのも仕方がないと感じるが、このむごたらしさは決
して不必要なものではなく、このむごたらしさこそが暴力の真実な
のだ。
 殴られても切りつけられても痛みを感じないかのように戦い続け
るハリウッド映画のヒーローは暴力を無痛化してしまう。そのヒー
ローに一撃で倒される敵役は死を無痛化してしまう。しかし暴力や
死というのはもんどりうつほど痛いものだし、体から流れる血は生
臭いにおいを放つものだ。クローネンバーグの映画はそのような痛
みや臭いを観客に感じさせる。彼の作品はそのようにして暴力にリ
アリティを取り戻すのだ。
 それは観ているものに苦痛を感じさせ、決して気持ちのいいもの
ではない。しかしそのようにして暴力のむごたらしさを想起するこ
とは戦争や犯罪という暴力がメディアを介することによってわれわ
れの現実から遠ざけられてしまった現在においては必要なことなの
ではないか。

 この作品が描くロシアン・マフィアという題材は私たちの現実か
ら遠く隔たった世界のことのように感じる。しかし、主人公のアナ
は私たちと同じように生活し、悩みを抱えた普通の人間である。そ
のアナがいやおうなく巻き込まれてしまう暴力、それは私たちの生
活のすぐそばにもそのような暴力が潜んでいることを示唆する。
 ストーリーも秀逸。ただ仕掛けは比較的たやすくわかってしまう。




□ ヒビコレリンク

 『ヒストリー・オブ・バイオレンス』
  http://www.cinema-today.net/0607/17p.html

 『ビデオドローム』
  http://www.cinema-today.net/0409/11p.html

 『イグジステンズ』
  http://www.cinema-today.net/0102/21p.html



□ DVD今日の買い!

<今日の作品:イースタン・プロミス>

 『イースタン・プロミス』公式サイト
  http://www.easternpromise.jp/


<今日のお勧め>

 もちろんクローネンバーグです。

 『ヒストリー・オブ・バイオレンス』
  http://tinyurl.com/6m72tz

 『クラッシュ 《ヘア解禁ニューマスター版》』
  http://tinyurl.com/5zef3t

 『スキャナーズ DVD-BOX デジタルニューマスター版』
  http://tinyurl.com/66eegs

 『ザ・ブルード/怒りのメタファー』
  http://tinyurl.com/6fx3df

 『ビデオドローム』
  http://tinyurl.com/6qxx7d


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2008年06月11日

[ほぼ日刊日々是映画] vol.2307 ★ 渚のシンドバッド

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2307号です。

euro2008に、W杯予選に、水泳とスポーツの話題が多いですね。
まあ、スポーツの話題が多いほうが平和な気がしていいです。
日本代表にもがんばってほしいものですね。

さて、
『ぐるりのこと。』がよかったので、橋口亮輔特集。
今日は『渚のシンドバッド』です。

昨日の『ぐるりのこと。』のリンクが間違ってました。スミマセン
http://www.cinema-today.net/0806/04p.html


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■ 今日の映画
 渚のシンドバッド

□ ヒビコレリンク

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■ 今日の映画 − 渚のシンドバッド


--cinema2231------------

 渚のシンドバッド

 1995年,日本,129分

-----------------------

<キャスト&クルー>

監督 橋口亮輔
脚本 橋口亮輔
撮影 上野彰吾
音楽 高橋和也

キャスト 岡田義徳
     草野康太
     浜崎あゆみ
     高田久実
     山口耕史

<評価>

☆☆☆1/2(満点=5)


<プレビュー>

 高校2年の伊藤は同じブラスバンド部で仲のよい吉田にひそかに
思いを寄せている。そのことを転校生の相原に気づかれてしまい、
父親にもゲイであることがばれて精神科に連れて行かれるが、そこ
で相原とばったり出会う…
 橋口亮輔監督の長編第2作。少年から青年へと変貌しようとする
若者を描いたドラマ。歌手デビュー前の浜崎あゆみが出演している
ことでも有名。


<レビュー>

 この登場人物の中で一番目を引くのは実は一番普通に見える吉田
浩之である。主人公の伊藤修司はゲイでなおかつ同級生に恋心を抱
くという悩みを抱え、相原果沙音は心に大きなトラウマを抱えてい
るが、この吉田はみんなから好かれ、彼女もいるし、家族ともそれ
なりにうまくやっているごく普通の高校生である。
 この吉田が伊藤に告白されて混乱する。普通の高校生として“ま
とも”な生活を送ってきた吉田にとってそれはどう対処していいの
かわからない出来事である。吉田は伊藤に「好きにすればいい」と
いうが、それはまったく伊藤のことを理解していないのである。
 この吉田という少年は自分がこれまでに教えられたり刷り込まれ
たりしてきた価値観を無批判に信じ、それを周りにも何の疑いもな
く当てはめ、押し付ける。だから彼は誰にでも優しく、女の子から
付き合おうといわれれば付き合う。彼の行動は外見上は優しくてい
い人でちゃんとしているように見えるけれど、その優しさは相手を
思いやってのものではなく、自分なりの常識に基づいた行動に過ぎ
ないのだ。
 このように自分の価値観に疑問を持たずに過ごせるのはコドモ=
少年の間だけだ。青年といわれる年代になると、他人との価値観の
違いに気づき、自分の常識が当てはまらない出来事に遭遇する。そ
出会いの中で相手を思いやる気持ちを育てていくことこそが大人
になるということである。吉田は“大人しい”少年だが、まったく
大人ではない。彼は伊藤に告白されることで、自分の常識からまっ
たく外れた出来事と遭遇する。彼は相手を思いやることができない
から、ただ混乱して自分の世界を守ろうとする。そして伊藤と友だ
ちでい続けようとするのだ。
 彼はそのようにしながらも、それが自己中心的な行動であるとは
まったく気づいていない。彼は彼なりに周囲に対して優しく振舞お
うとしているのだ。しかし彼の行動は自分という基準に基づいた優
しさの押し付けでしかなく、思いやりではない。
 しかし、高校生なんてのはそんなもので、この作品でもほとんど
のクラスメートがそうなのだ。伊藤と相原だけがすでに自分と社会
の間の齟齬を経験しており、彼らの一歩先を行っている。しかし、
他のクラスメートにはそれが理解できない。彼らは自分の価値観で
二人を判断し、彼らを排除する。
 これは大人になったからこそ理解できる青い時代の話である。高
校生が主人公ではあるが、高校生が見たら退屈な話だろう。大人に
なって振り返るからこそわかる青春の青臭さがそこにあるのだ。

 主人公の高校生たちを演じた岡田義徳、草野康太、浜崎あゆみら
は非常にいい演技をしていると思う。ぎこちなくたどたどしいが、
そのぎこちなさがリアルなのだ。うまく演じているというよりはナ
チュラルさが非常にいい。特に浜崎あゆみはこのまま女優としてやっ
ていっても面白かっただろうと思う。演技がうまいというわけでは
ないが、キャラクターにぶれがなく、本当に自然だ。
 橋口亮輔監督の演出はまだ荒削りな印象だ。せりふのないシーン
で長回しをしてみたり、やりたいことはわかるけれどまだこなれて
いない感じがする。岡田義徳と浜崎あゆみをそれぞれ真正面から撮っ
た精神科のシーンなんかも、もう少し心理が伝わりやすく、スムー
ズに展開する撮り方ができたように思う。登場人物もぎこちなく、
シーンの展開もぎこちなくなってしまったことで、全体が冗長なも
のに感じられてしまった。
 それでもいい映画だった。友情や恋や汗で彩られた美男美女たち
の青春映画ではない、本当の青春映画だ。




□ ヒビコレリンク

 『ぐるりのこと。』
  http://www.cinema-today.net/0806/04p.html


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<今日の作品:渚のシンドバッド>

 『渚のシンドバッド』
  http://tinyurl.com/4fohox

  楽天でレンタルする→http://tinyurl.com/474ylf


<今日のお勧め>

 橋口亮輔

 『ハッシュ!』
  http://tinyurl.com/53oze4

 『二十才の微熱』
  http://tinyurl.com/3hxqnv

 『無限の荒野で君と出会う日』
  http://tinyurl.com/3nc2cg



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2008年06月10日

[ほぼ日刊日々是映画] vol.2306 ★ 茄子 アンダルシアの夏/スーツケースの渡り鳥

================================================2008/6/10==
                        -vol.2306--
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2306号です。

昨日はうっかりeuro2008を見てしまったので眠いです。
やはりヨーロッパのイベントは時差がつらい…
オリンピックは北京なので、そんなにつらくはなさそうですが、
今度のW杯は南アフリカで、時差はヨーロッパと同じなので、
これまたつらいでしょう。

今日は『茄子 アンダルシアの夏』と『茄子 スーツケースの
渡り鳥』の2本立て。図らずも昨日から自転車つながりです。

私が今年の1月に買った私の愛車↓は快調です。
http://tinyurl.com/3mcgr4
やはりいい自転車だと長距離も楽。30分くらいの距離なら楽々
です。メタボが気になるという方、会社が10km程度の距離なら
通勤にどうぞ。
私は悪路を走ることもあるのでMTBにしましたが、街だけを走る
なら、シティ仕様のこちらがオススメ
http://tinyurl.com/4ltnof
ディスクブレーキなので、少々の雨でも安心です。
女性にはこちら。
http://tinyurl.com/3pzkku

自転車映画特集は多分今日までです。


ほぼ日刊日々是映画 ブログ版
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-------- 目次 --------

■ 今日の映画1
 茄子 アンダルシアの夏

■ 今日の映画2
 茄子 スーツケースの渡り鳥

□ ヒビコレリンク

□ DVD今日の買い!

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■ 今日の映画1 − 茄子 アンダルシアの夏


--cinema2229------------

 茄子 アンダルシアの夏

 2003年,日本,47分

-----------------------

<キャスト&クルー>

監督 高坂希太郎
原作 黒田硫黄
脚本 高坂希太郎
撮影 白井久男
   岸克芳
音楽 本多俊之

キャスト 大泉洋
     筧利夫
     小池栄子
     平野稔

<評価>

☆☆☆☆(満点=5)


<プレビュー>

 スペイン、アンダルシア地方のバルでは自転車レースが目の前を
通過するのにあわせてテレビを導入。その日は地元出身のぺぺ・ベ
ネンヘリが“ブエルタ・ア・エスパーニャ”を走る日だった。そし
て、その日は折りしもぺぺの兄アンヘルの結婚式の日でもあった。
ぺぺはチームのエースとともに集団を抜け出しスパートをかける…
 スタジオ・ジブリ出身の高坂希太郎が黒田硫黄の同名マンガを映
画化。47分の中篇ながら十分なドラマを描きこんだ好作品。


<レビュー>

 自転車レースというのはヨーロッパではサッカーに次ぐくらいの
人気のスポーツだというのはよく聞く(とはいっても、サッカーに
次ぐ人気だというスポーツはラグビーやアルペンスキーやF1など
たくさんあるのだが)。しかし日本ではあまり人気のないこのスポー
ツを映画にしようと考えたのは好きだからこそなのだろう。
 そして、その試みは成功していると思う。ニュース映像なんかを
見ていると、ただ集団で走っていて最後だけみんな一生懸命こぐみ
たいな印象がある自転車レースの中にある駆け引き、チームの思惑、
チーム内の関係なんていうものを主人公のぺぺの視点からしっかり
描き、うまくまとめている。もちろんこれは非常に小さい話で、だ
からどうしたといわれてしまえば吹き飛んでしまうようなエピソー
ドなんだけれど、私はこういう小さい話は好きだ。
 映画、特にアニメというのは何か壮大な世界観のようなものがあっ
て、その世界の中である種のスペクタクルが展開されるというよう
なものが観客から期待されているような気がする。スタジオ・ジブ
リの作品(というよりは宮崎駿作品)だって牧歌的な絵を描きなが
らも、描く世界はどれも現実を凌駕した壮大なものである。
 それに対してこの作品はプロスポーツというスペシャルな世界で
はあるけれど、自転車しかとりえのない普通の男が悪戦苦闘すると
いう非常に日常的な物語だ。サブプロットとして展開される兄の結
婚式にまつわる過去の物語もこの物語の日常性と、ぺぺの普通さを
補強する。
 つまり、この作品は確信犯的に小さな物語を作っているのだ。宮
崎駿のような作品を期待するジブリファンにはまったく持って物足
りない作品だろうとは思うが、私はこういう小さな作品にこそ映画
の真髄があるような気がする。この作品のディテールはアニメとい
うよりは実写的で、感心する。アニメだから映像は自由に作れるは
ずなのに、この作品はまるで物理的なカメラで撮影しているかのよ
うな映像の制約に従う。空撮も実際にヘリで撮ったようにしか動か
ず、目の前を通過する自転車も固定カメラの首が触れる範囲でしか
被写体を追わない。アニメであるにもかかわらずそのようなリアリ
ティを追求するところにもこの作品のあくまで日常的であろうとい
う姿勢を感じる。
 しかし、最後の最後で映像は劇画に転調する。この転調が非常に
効果的でいい。宮崎駿の作品では決して見ることの出来ない生々し
くておかしい描写、これが最後にぴりりと効いている。

 さて、主人公の声は大泉洋。この作品は2003年だから、彼が全国
的に名の知れる前の作品である。実はジブリ作品には『千と千尋の
神隠し』ですでに出演しているが、それはスタジオ・ジブリの人た
ちが「水曜どうでしょう」のファンだったからだという。特にこの
作品の監督高坂希太郎は「水曜どうでしょう」の熱狂的なファンで、
どうでしょうファンにはお馴染み藤村Dも声の出演を果たしている。
そしてエンディングは小林旭の「自動車ショー歌」の替え歌である
「自転車ショー歌」でこれを自転車好きで有名な忌野清志郎が歌っ
ているわけだが、「自動車ショー歌」も実はどうでしょうファンに
はおなじみの歌というわけだ。
 つまりは好きなもので映画を作れる、こんな幸せなことはないと
いう話。しかし、それできちんと面白い作品を作れるんだから凄い。




■ 今日の映画2 − 茄子 スーツケースの渡り鳥


--cinema2230------------

 茄子 スーツケースの渡り鳥

 2007年,日本,54分

-----------------------

<キャスト&クルー>

監督 高坂希太郎
原作 黒田硫黄
脚本 高坂希太郎
撮影 加藤道哉
音楽 本多俊之

キャスト 大泉洋
     山寺宏一
     大塚明夫
     藤村忠寿

<評価>

☆☆☆1/2(満点=5)


<プレビュー>

 イタリア人の国民的スターレーサーであるマルコ・ロンダーニが
自殺、ぺぺのチームメイトでマルコと同郷のチョッチは落ち込むが
日本への遠征には参加すると言う。マルコの葬式に立ち寄り日本へ
降り立った一行はレースの日を迎えるのだが…
 『茄子 アンダルシアの夏』の続編、舞台を日本に移し、ぺぺを
取り巻く人々の友情を描く。日本のアニメとして初めてカンヌ国際
映画祭の監督週間に正式出品された。


<レビュー>

 前作から4年の歳月を経て作られた続編。舞台を日本に移すが、
その前にぺぺの新しいチームメイトであるチョッチと旧知であった
スターレーサーの自殺というエピソードが語られる。レースでも疲
れた表情で、マルコの葬儀も遠くから見つめるだけのチョッチの姿
は彼の悩みの深さを言葉を使うことなく語る。そして、日本でコー
スを下見しているとき、彼の頭にマルコとの思い出がよみがえる。
 これは前作のぺぺと兄の関係に似ている。チョッチとマルコの間
に距離が出来てしまった理由は語られないが、重要なのはそのこと
ではなく、チョッチがマルコを尊敬し続けていながらどこかで自ら
彼を遠ざけてしまっていたことなのだ。そのことと彼の自殺から生
じる自責の念、それは本当は根拠のないものなのだろうけれど、
チョッチにとっては人生を見つめなおす大きなきっかけとなるのだ。
自分の才能のなさを無視できなくなって引退しようかと考えるチョッ
チと、才能がないことを認識しながら夢を追うぺぺ、このふたりの
間の友情がマルコとの間の友情に挫折したチョッチを救う。
 複雑な人間の心理を地味に描くという点では、前作と同じく小さ
な世界を描いた好作品と言えるだろう。しかし、前作と比べるとど
うもリアリティが失われてしまったように思う。新たにレーサーの
視点からの映像が加えられ、レースのリアリティは十分なのだけれ
ど、日本という異国にいる彼らをその異国にいるわれわれが見ると
いう形になったことで彼らとの間に距離が出てしまったように思う。
それによって今ひとつ入り込めない話になってしまったかもしれな
い。

 ただ、「水曜どうでしょう」のファンには前作よりもさらに楽し
める内容になっている。藤村Dは監督役になったことで格段にセリ
フが増え、彼とぺぺのやり取りではどうでしょうでのやり取りを思
わせる会話が多数登場する。
 もちろん水曜どうでしょうファンに向けた映画ではないので、そ
れで映画として面白くなるというわけではないのだけれど、こうい
うわかる人にしかわからないくすぐりがわかるとうれしいものであ
る。
 原作にぺぺのエピソードは2話しかないそうなので、もう続編は
なさそうだが、もっと続いても面白そうな話だ。




□ ヒビコレリンク

 「水曜どうでしょう official website」
  http://www.htb.co.jp/suidou/


□ DVD今日の買い!

<今日の作品:茄子 アンダルシアの夏/スーツケースの渡り鳥>

 『茄子 アンダルシアの夏』
  http://tinyurl.com/5arfm5

 『茄子 スーツケースの渡り鳥』
  http://tinyurl.com/5b5doq


<今日のお勧め>

 大泉洋に注目

 『HONOR〜守り続けた痛みと共に』
  http://tinyurl.com/59xw9t
  所属するTEAM NACSの最新ステージ

 『いぬ会社 24時間は働けません 編』
  http://tinyurl.com/6hu9nv

 『ロス:タイム:ライフ Life in additionaltime』
  http://tinyurl.com/66szo2

 『ハケンの品格 DVD-BOX』
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2008年06月09日

[ほぼ日刊日々是映画] vol.2305 ★ Oi ビシクレッタ

=================================================2008/6/9==
                        -vol.2305--
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2305号です。

このところ、木曜日と日曜日が休みというペースになっています。
まあしばらくはこんな感じで。

秋葉原の事件はひどいものでした。最近は「死刑になりたい」と
言って人を殺す事件がいくつもあります。しかし…
この事件についてのニュースを見ながら、『ぐるりのこと。』を
思いました。この映画で取り上げられた殺人事件、その殺人犯と
数メートルの距離にいる主人公、メディアで隔てられたわれわれ、
考えるべきことが次から次へと湧いてきます。
まずはこの『ぐるりのこと。』を見てください。
http://www.cinema-today.net/0608/04p.html
http://www.gururinokoto.jp/

さて、euro2008がはじまりました。まあサッカーファン以外は興
味のないイベントだとは思いますが、この大会を見ていると、日
本代表のレベルはまだワールドレベルに達していないのだと痛感
します。パスのスピード、トラップの正確さ、フィジカルの強さ、
決定力、どれをとってもちょっとレベルが違います。もちろん日
本代表の中にもそのレベルに達している選手はいるし、スピード
とかパスとかひとつの技術をとれば多くの選手がワールドレベル
に近いレベルの部分を持っているとは思いますが、まだまだでしょ
う。試合の中継が深夜で厳しいのですが、死のC組になったオラ
ンダを頑張って応援したいと思います。
ユニフォームがクラシックスタイルで格好いい!
http://tinyurl.com/3welp5
あとはやはり優勝候補のポルトガルかな。
http://tinyurl.com/4rvlkt


今日は『Oi ビシクレッタ』というブラジル映画です。


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-------- 目次 --------

■ 今日の映画
 Oi ビシクレッタ

□ ヒビコレリンク

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■ 今日の映画 − Oi ビシクレッタ


--cinema2228------------

 Oi ビシクレッタ

 O Camihno das Nuvens
 2003年,ブラジル,85分

-----------------------

<キャスト&クルー>

監督 ヴィセンテ・アモリン
脚本 ダヴィド・フランサ・メンデス
撮影 グスタヴォ・ハドバ
音楽 アンドレ・アブハムラ

キャスト ヴァグネル・モーラ
     クラウジア・アブレウ
     ラヴィ・ラモス・ラセルダ

<評価>

☆☆☆(満点=5)


<プレビュー>

 自転車で旅を続けるロマンとローゼと5人の子供たち。4台の自
転車に乗り、食うや食わずで月1000リアルの職を求めて旅をする。
ローゼは息子と歌を歌って小銭を稼いだり、途中で知り合った人の
親切でハンモックを作って日銭を稼いだりするが、ロマンは意固地
に旅を続けようとする…
 ブラジルで実際にあった出来事をオーストリア出身のヴィセンテ・
アモリンが映画化。ブラジル映画界の重鎮バレット一家がプロデュー
スした。



<レビュー>

 ブラジル映画というと近年では『シティ・オブ・ゴッド』が注目
されたくらいでマイナーなイメージは払拭できないが、古くはグラ
ウベル・ローシャやネルソン・ペレイラ・ドス・サントスという名
監督を輩出し、それ以降もちょこちょこと作品を世に送り出してい
る。そのブラジル映画を支えてきたのがこの作品でもプロデュース
を行っているバレット一家である。ルイス・カルロス・バレットは
ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス作品で撮影監督などを務め、
それ以降、多くの作品をプロデュースしている「ブラジル・ニュー
シネマの父」である。妻のルーシーは夫とともに多くの作品を手が
け、今回は息子のブルーノも加わっている。このブルーノ・バレッ
トは日本でも公開された『クアトロ・ディアス』を監督、現在はハ
リウッドに進出して『ハッピー・フライト』を監督した。
 この作品はそんなバレット一家が総出でプロデュース、監督はこ
れが長編劇映画としてはデビュー作となるヴィセンテ・アモリンだ
が、CMやミュージックビデオを手がけてきたらしく、実力は折り
紙つき。音楽畑出身らしくブラジリアンポップの帝王ロベルト・カ
ルロスの楽曲を取り込んで親しみやすい作品に仕上げている。この
作品の中で人々が口々に彼の歌を口ずさむように、このロベルト・
カルロスはブラジルでは知らない人はいないという有名人。元ブラ
ジル代表のサッカー選手ロベルト・カルロスも彼にちなんで名づけ
られたとか。
 そして、物語は実話に基づく貧しい一家の物語。彼らがその道中
で出会う人々も多くは貧しい人々で、貧しいにもかかわらず彼らに
助けの手をさしのべたり、差し伸べられなくとも彼らを温かく迎え
る。貧富の差が激しく、貧困にあえぐ人たちが多いブラジルにおい
てはこの物語は共感を呼んだだろう。その境遇は厳しいものだが、
希望がないわけではない。決してハッピーエンドではないが、悲惨
なものでもない。貧しくともたくましく生きていく、それが今のブ
ラジルの人々を励ますメッセージなのではないか。

 彼らに比べれば安穏とした日常を過ごす日本人にとってはこの作
品はブラジルらしさを感じ、日本でもこういう未来がありうるとい
う危機感を感じはするものの、ひとつの外国のエピソードに過ぎな
いという気がする。思春期を迎えた一家の長男アントニオと両親や
社会との関係は、普遍的な物語として魅力があり、見所となってい
はいるが、全体的にはちょっとピンとこないという印象は否めない。
 日本には世界各国の映画が入ってきて、多くの映画を見る機会が
あるというのは非常にいいことだが、文化の差が存在する以上それ
らの映画をすべて楽しめるとは限らない。この作品も非常にいい作
品だとは思うのだが、ピサロ神父なる人物に対する信仰心をはじめ
とした宗教に対するスタンスとか、貧しい人たちに対する社会の態
度とか、その文化の差はなかなか埋めがたい。
 もちろんこの作品を通してブラジルという国に対する理解をある
程度深めることは出来るけれど、そのために作られた作品というわ
けではないので、それだけでは埋まらない溝がある。これをきっか
けにブラジルについてもっと知ろうと思えば素晴らしいと思うが、
この作品だけで終わってしまうとちょっと中途半端という印象になっ
てしまう。
 良くも悪くも“ブラジル”という国と深く関わる作品。ブラジル
に興味があれば楽しめる。




□ ヒビコレリンク

 『クアトロ・ディアス』
  http://www.cinema-today.net/0102/19p.html


□ DVD今日の買い!

<今日の作品:オイ・ビシクレッタ>

 『オイ・ビシクレッタ』
  http://tinyurl.com/6y3bsj


<今日のお勧め>

 最近のブラジル映画たち

 『フランシスコの2人の息子』
  http://tinyurl.com/5ql5zp

 『クアトロ・ディアス』
  http://tinyurl.com/556jo9

 『シティ・オブ・ゴッド』
  http://tinyurl.com/6kd4vq



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2008年06月07日

[ほぼ日刊日々是映画] vol.2304 ★ マラノーチェ

=================================================2008/6/7==
                        -vol.2304--
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2304号です。

マンゴーが食べたいですよ。
暑いとマンゴーが食べたくなるんです。
最近八百屋によく並んでいる1800円とかの宮崎マンゴーを買って
しまおうかと思ったりしてしまいます。
特大マンゴーが1980円なんてのを見ると、ついクリックしてしま
います。
http://tinyurl.com/6jvtuh
でもやっぱり、もったいないからメキシコ産を食べると思います。
400円くらいの。

でもやっぱりいまは宮崎産が食べたいねぇ
http://tinyurl.com/5ua74c

今日はガス・ヴァン・サントの幻のデビュー作『マラノーチェ』
です。


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-------- 目次 --------

■ 今日の映画
 マラノーチェ

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■ 今日の映画 − マラノーチェ


--cinema2227------------

 マラノーチェ

 Mala Noche
 1985年,アメリカ,78分

-----------------------

<キャスト&クルー>

監督 ガス・ヴァン・サント
原作 ガス・ヴァン・サント
脚本 ガス・ヴァン・サント
   ウォルト・カーティス
撮影 ジョン・キャンベル
音楽 ピーター・ダマン
   カレン・キッチン
   クレイトン・リンゼイ

キャスト ティム・ストリーター
     ダグ・クーヤティ
     ナイラ・マッカーシー
     レイ・モンジュ
     サム・ダウニー

<評価>

☆☆☆(満点=5)


<プレビュー>

 オレゴン州ポートランドの食料品店で働くウォルトは、ある日見
かけたメキシコ人の青年ジョニーに一目惚れ、言葉は通じないが何
とか口説こうとするウォルトと仲間と気ままに過ごすジョニー、ウォ
ルトはジョニーたちと食事をすることに成功するが…
 『エレファント』のガス・ヴァン・サントの幻の長編デビュー作。
主に映画祭で上映されただけで、日本でも2007年に初めて地上映さ
れた。


<レビュー>

 モノクロの非常に暗い画面でテーマは不法移民と同性愛、場所は
オレゴン州ポートランドの場末。この雰囲気はジム・ジャームッシュ
の初期作品『パーマネント・バケーション』や『ストレンジャー・
ザン・パラダイス』を思い出させる。このふたつの作品は1980年と
84年のもの、直接の影響を受けているかどうかはわからないが、ど
ちらもおそらく60年代後半から70年代のアメリカン・ニューシネマ
のネガティヴな後継者といえるだろう。
 アメリカン・ニューシネマは『俺たちに明日はない』や『真夜中
のカーボーイ』のように反体制的な若者を描く作品で、無力感がそ
こに描かれたものが多い。80年代に入ると『ロッキー』のようにそ
れを反骨心に変えて夢をつかむというポジティヴな方向に変化して
いく一方で、ジム・ジャームッシュのようにさらなる無力感に襲わ
れ「何もしない若者」を描くというネガティヴな方向に変化するも
のもあった。ガス・ヴァン・サントのこの作品はそのネガティヴな
方向に変化した作品の最たるもので、貧しい白人と不法移民という
いわば社会の底辺を被写体とする。
 ウォルトの働く食料品店にやってくる人々はホームレスすれすれ
の貧しい人ばかり、ウォルトのコートは背中が裂け、Tシャツの背
中も大きく破れている。そのウォルトはジョニーに15ドルで寝てく
れと頼む。テーマは重いのだがそれを感じさせない。厳しい状況に
あるはずの不法移民の若者たちは働くわけでもなく、ただただふざ
けあっているだけ、ウォルトも自分の貧しさを国するよりはもっと
貧しいメキシコ人たちのことを気にかける。
 しかし、やはり彼らに未来は見えない。彼らが求めているのはあ
くまでも刹那的な楽しさであって、そこにあるのは希望ではなく諦
めだ。希望も絶望もないただの日常、しかし不法移民であるメキシ
コ人たちには社会は厳しい。しかし、その厳しい社会の仕打ちも怒
りや抵抗を生むわけではない。
 それは徹底的な無感動である。

 短いインサートショットや新聞越しのショットなど、はっとする
ような新鮮なショットもある。新鮮な映像は興味を惹くけれど、そ
の映像が語る中身は空虚である。空虚を語るということも凄いこと
だとは思うけれど、あまりになにもないというのも厳しい。
 映像も語り口も独特で、才能を感じさせはするけれど、この時点
では心に残る作品とはなりえていない。ガス・ヴァン・サントはこ
の後、『ドラッグストア・カウボーイ』や『マイ・プライベート・
アイダホ』を、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』をヒッ
トさせ、『エレファント』では監督賞を取った。これを見ると順調
にキャリアを重ねているように見えるけれど、このデビュー作で見
せた虚無感や斬新さは影を潜めてしまっているようにも見える。彼
がキャリアの中で巧妙な語り口を身に着けてきたけれど、どこか物
足りないものがあり、その物足りないものがこの作品にはあるよう
な気がする。無感動という形で表れた社会との違和感がうまく表現
されれば名作が生まれるかもしれない。




□ ヒビコレリンク

 『エレファント』
  http://cinema-today.net/0406/02p.html

 『ストレンジャー・ザン・パラダイス』
  http://cinema-today.net/0510/01p.html

 『真夜中のカウボーイ』
  http://www.cinema-today.net/0103/20p.html


□ DVD今日の買い!

<今日の作品:マラノーチェ>

 『マラノーチェ』
  http://tinyurl.com/6rco2t


<今日のお勧め>

 ガス・ヴァン・サント

 『ガス・ヴァン・サント コンプリートDVD-BOX』
  http://tinyurl.com/5kp6yb

 『エレファント デラックス版』
  http://tinyurl.com/5p62eg

 『ドラッグストア・カウボーイ』
  http://tinyurl.com/5fxhal

 『ラストデイズ』
  http://tinyurl.com/59yzt6



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2008年06月06日

[ほぼ日刊日々是映画] vol.2303 ★ ザ・マジックアワー

=================================================2008/6/6==
                        -vol.2303--
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2303号です。

去年発売された『B型自分の説明書』という本が売れ続けている
そうです。
http://tinyurl.com/5nmw3f
『A型自分の説明書』というのも発売されているんですが、
http://tinyurl.com/5astbh
A型のほうが断然多いにもかかわらず、B型のほうが売れている
そうな。
私自身もB型ですが、B型の人は「やっぱりB型だ」と言われな
れているために逆にB型という血液型が好きなのが理由ではない
でしょうかねぇ。
B型人間は血液型に関心が高いという調査結果もあるようです。
http://blogch.jp/up/2008/06/05120925.html
あとは、B型の人はいい加減なので買ったのをなくしてしまった
り、友達に貸したりあげたりしてしまってもう一冊買ってしまう
とか…
私も読んでみたい気はしますが、買うのが面倒くさい… くれた
ら読むよくれたら。読者で買って読んだという方、ください。

B型じゃないから興味ないというか方こちら↓を
http://tinyurl.com/58qvl9
『B型の彼氏』なんて映画もありましたね…
http://tinyurl.com/6p5fc5

今日は監督・出演陣がTVに出まくっている明日公開
『ザ・マジックアワー』です。
お金をかけているだけあって面白いです。


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■ 今日の映画
 ザ・マジックアワー

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■ 今日の映画 − ザ・マジックアワー


--cinema2226------------

 ザ・マジックアワー

 2008年,日本,138分

-----------------------

<キャスト&クルー>

監督 三谷幸喜
脚本 三谷幸喜
撮影 山本英夫
音楽 荻野清子

キャスト 佐藤浩市
     妻夫木聡
     深津絵里
     綾瀬はるか
     西田敏行
     小日向文世
     寺島進
     戸田恵子
     伊吹吾郎

<評価>

☆☆☆1/2(満点=5)


<プレビュー>

 映画のセットのような町並みの港町・守加護(スカゴ)、そこで
ホテルの支配人をする備後は町のボス天塩の愛人マリとの情事を見
つかってしまう。絶体絶命の備後はボスが探している幻の殺し屋デ
ラ富樫と知り合いだとうそぶき、5日以内に連れてきたら命は助け
てやるといわれる。備後は俳優を雇って天塩を騙そうとするが…
 三谷幸喜がギャング映画を題材に作り上げたコメディ映画。豪華
キャストと軽妙な笑いがロバート・アルトマンを思わせ、いい感じ。



<レビュー>

 三谷幸喜の前作『THE 有頂天ホテル』は『グランドホテル』をモ
チーフにしたグランドホテル形式の映画だったけれど、三谷幸喜は
元来このような登場人物が多い映画が好きなのではないかと思う。
この作品でもたくさんの有名俳優が短い時間登場し、映画に花を添
える。その多くは劇中に登場する架空の映画で、中井貴一、唐沢寿
明、鈴木京香、谷原章介などが登場、極めつけは『黒い101人の女』
の監督役で登場する市川崑。言うまでもないが市川崑監督の代表作
『黒い十人の女』のパロディである。2008年に亡くなった市川崑監
督の最後の姿となった。
 こういうたくさんの有名俳優が出演する映画というとやはりロバー
ト・アルトマンを思い出す。特に『プレタポルテ』や『ショート・
カッツ』といった作品は、たくさんの有名俳優が物語の筋とは関係
なく出演していた。それが妙に面白かったりすることもあったりし
て、それはこの作品にも通じるところがある。特に不意に現れる香
取慎吾には『THE 有頂天ホテル』を見た人ならついつい笑ってしま
うだろう。
 三谷幸喜はさすがに笑いのつぼを心得ている。言うなれば誰もが
安心して笑うことが出来るコメディ。大爆笑というわけではないけ
れど、気持ちのいい笑いがテンポよくやってきて、リラックスして
楽しく見られる。ついつい笑ってしまうのは予告編でも使われてい
た佐藤浩市がナイフをなめるシーン、予告編ではそれほど面白くな
いけれど、本編では鉄板のギャグという感じで笑いが漏れる。その
部分以外でも劇中映画の破天荒ぶりなど笑えるところはたくさんあ
る。前述した『黒い101人の女』の“女”のあまりの多さ、唐沢寿
明が演じた“ゆべし”なるスターのスターっぷり、このあたりも絶
妙の笑いどころだ。

 ただ、キャスティングにはちょっと難があったかもしれないとい
う気がする。佐藤浩市、西田敏行、小日向文世、寺島進といった実
力派の役者達はさすがにうまく、役柄にも合っている。妻夫木聡は
しっかり演技しているけれど、役柄にあっているかといえば今ひと
つという気がする。あの役はもっと気が弱そうなキャラクターのよ
うな気がして、妻夫木聡ではちょっと凛としすぎている。戸田恵子
はおかしいような気もするが、強烈なインパクトで笑える。
 深津絵里は演技があまりにオーバーで、最初登場したシーンはセッ
トの作り物じみた感じもあって、このシーンは劇中の映画の撮影シー
ンに違いないと私の直感が告げた。しかし、そうではなくこれこそ
が“地”のシーンだった。それ自体はだましとして面白いものなの
だが、その後も深津絵里の大げさな演技は続く。まあ魔性の女とし
て男を覚ます演技を続けているということなのかもしれないが、普
段からあんな舞台女優みたいな話し方や動きをしていたら魔性の女
などにはなれないと思う。
 綾瀬はるかにいたっては、どうしてキャスティングされたのか今
ひとつわからない。役としては必要だが、もっと地味な役者が演じ
たほうがよかったのではない。綾瀬はるかではかわいすぎて役柄に
合わない。
 このように役柄に合わないというのはキャスティングに難がある
というのもあるが、演出にも多少難があるのではないかと思う。名
監督は役者が本来持つイメージとは異なる役であっても演出によっ
てふさわしい演技を引き出すものだ。それで映画が面白くなり、同
時に役者には新しい境地が開ける。三谷幸喜は笑いを作るという点
ではさすがに一流だが、映画監督として役者を扱うのはまだまだ一
流ではないのかもしれない。
 優秀なスタッフと莫大な予算をかけただけのことはあるけれど、
名作というまでには至らない。三谷幸喜が名監督になるのはまだま
だ先のことのようだ。




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                     日々是映画第2303号
                      2007年6月6日発行
                     発行:cinema-today
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posted by ヒビコレエイガ at 14:02| Comment(0) | TrackBack(0) | メルマガ(仮) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする