2009年12月29日

[ほぼ日刊日々是映画] vol.2680 ★ マチュカ 〜僕らと革命〜

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2680号です。

年末年始になんのDVDを見ようかなぁ…という方は
greenzに記事を書きましたので、こちらをご参考に。
http://greenz.jp/2009/12/28/dvdrecomend09/
twitterをやられている方は、これをRetweetなんかしていただ
けると、私が後ほどこっそりフォローするかもしれません。

さて、今日は『マチュカ 〜僕らと革命〜』というチリ映画。
なかなか暗いけど面白かったですよ。


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■ 今日の映画
 マチュカ 〜僕らと革命〜

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■ 今日の映画 − マチュカ 〜僕らと革命〜

<1行コメント>
クーデターに翻弄される少年の成長物語、暗く重いが学びがある。


--cinema2548------------

 マチュカ 〜僕らと革命〜

 Machuca
 2004年,チリ=スペイン=イギリス=フランス,121分

-----------------------

<キャスト&クルー>

監督 アンドレス・ウッド
脚本 エリセオ・アルトゥナガ
   ロベルト・ブロツキー
   マムーン・ハッサン
   アンドレス・ウッド
撮影 ミゲル・ロアン・リティン・メンス
音楽 ミゲル・ミランダ
   ホセ・ミゲル・トバー

キャスト マティアス・ケール
     アリエル・マテルーナ
     マヌエラ・マルテリィ
     アリーン・クッペンハイム

<評価>

☆☆☆☆ (満点=5)


<プレビュー>

 1973年、チリ・サンチアゴ。裕福な家庭のゴンサロが通うセント・
パトリック・スクールに貧困層の子供が数人入学してくる。そのう
ちの一人ペドロと友達になったゴンサロは彼を通して初めてチリの
現実を目の当たりにし、初恋も経験する…
 革命とクーデータに燃えた73年のサンチアゴを少年の目から描い
た社会派ドラマ


レビュー

 チリでは1970年にアジェンデが政権を取り、共産主義よりの政策
をとった。貧困層はこれを歓迎したが、富裕層は“コミュニスト”
としてこれに反対し、混乱がつづいた。この混乱はチリ国内に権益
を持ち、同時に共産主義の拡大に強く反対するアメリカも絡んで複
雑なものなのだが、この映画ではとりあえず貧困層と富裕層の対立
が激しかったということを知っていればいいし、知らなくてもゴン
サロがそれを学ぶのと一緒になんとなく知ることができるようになっ
ている。

 裕福な家庭で育ったゴンサロは本当に何不自由なく暮し、スラム
の存在する知らなかったようだ。彼が通う学校の進歩的な校長マッ
ケンロー神父は社会の新たな流れを汲んで生徒達にも進歩的な教育
を授けるべく地元の貧困層の子どもたちを授業料無料で編入させる。
もちろん軋轢があり、典型的ないじめっ子も登場するのだが、主人
公のゴンサロはその中の一人ペドロと仲良くなっていく。

 知らない世界を知り、初恋も経験するといういわゆる少年の成長
もの、階層の壁を越えて友情を育むふたりの少年の姿が微笑ましい
が、そこには常に嫉妬と周囲との軋轢がある。

 この少年の物語の展開は彼ら自身によってではなく、その周囲と
の軋轢によって劇的に変化し、アジェンデ政権がクーデターによっ
て倒れることで結末がつけられる。そのクーデター後の展開は衝撃
的だ。

 人は政治に翻弄され、植えつけられたイデオロギーを自分の考え
であるかのように思い込まされる。そしてそのことに気づく人は少
ない。子供たちはまだイデオロギーに染まっておらず、階層を越え
て人と人として付き合うことができる。ゴンサロやペドロたちの年
齢(おそらく13歳くらいか)は微妙な年齢、その年齢で社会が掲げ
るイデオロギーが大きく変わるという経験をするというのはいかな
るものか。

 この映画で描かれているのは政治の大変動という劇的な出来事だ
が、同時にその過程で経験する日常の小さな出来事によっても子供
の考えや行動が影響されるということも描かれている。親や先生と
いった身近な大人の行動や言葉に秘められたイデオロギーが子供の
考え方を形成して行ってしまう。この映画の重苦しい終わり方を見
て、自分の言葉や行動に責任を持つことの重要さに改めて気づく。
70年代にチリで起きたことを知る人は少ないけれど、歴史から学べ
ることは学ぶべきだ。軽率な発言は常に無知から生じる。自分の無
知を知り、学ぶ努力を怠らなければいくらかはマシになるのかもし
れない。

 少年は経験によって成長した。しかし失ったものも大きい。その
ことから学べることは多い。




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<今日の作品:マチュカ 〜僕らと革命〜>

 『マチュカ~僕らと革命~』
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<今日のお勧め>

 【ワールド・チルドレン・シネマ】というシリーズみたい

 『ジョッキーを夢見る子供たち』
  http://bit.ly/6mFr8q

 『ストレイドッグス~家なき子供たち~』
  http://bit.ly/50Zhm3

 『13歳の夏に僕は生まれた』
  http://bit.ly/6pbZvC


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2009年12月27日

[ほぼ日刊日々是映画] vol.2679 ★ プライド・アンド・グローリー

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2679号です。

年末はやはりなかなか映画も観れないということです。
皆さんも忙しくてめるまがなんか読む暇もないでしょうから、
ちょうどいいかなということで。ポツリポツリとお届けしてい
きます。

でも、なぜ忙しいかといえば、実はホームベーカリーを買って
しまったから!!
こちら↓
http://bit.ly/4xc0Df
早速、パンを焼きましたが、本当に材料をセットして後は待つ
だけ。4時間で焼きあがります。タイマーをセットして夜中に
焼いてもうるさくありませんでした。
そして、今日はうどん!を作りました。これまた美味!
http://f.hatena.ne.jp/twitter3/20091227141036
うどんも買う必要ないかもしれない…

餅もつけるので、年末年始のお楽しみにぜひ!
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今日は『プライド・アンド・グローリー』、骨太の警察ものです。


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■ 今日の映画
 プライド・アンド・グローリー

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■ 今日の映画 − プライド・アンド・グローリー

<1行コメント>
暗く厳しい現実を克明に描く、ハードボイルドな警察ドラマ


--cinema2545------------

 プライド・アンド・グローリー

 Pride and Glory
 2008年,アメリカ=ドイツ,130分

-----------------------

<キャスト&クルー>

監督 ギャヴィン・オコナー
原案 ギャヴィン・オコナー
   グレゴリー・オコナー
   ロバート・ホープス
脚本 ジョー・カーナハン
   ギャヴィン・オコナー
撮影 デクラン・クリン
音楽 マーク・アイシャム

キャスト エドワード・ノートン
     コリン・ファレル
     ジョン・ヴォイト
     ノア・エメリッヒ

<評価>

☆☆☆(満点=5)


<プレビュー>

 NYPD31分署の所長フランシス・ティエニーの家族は警察一家、警
察のアメフトの試合中に部下の警察官4人が殺される事件が置き、
特別捜査班が結成されることに。しばらく現場から遠ざかっていた
弟のレイがその班に入ることになり、近所の子供から重要な証言を
得る。一方、妹の夫であるジミー・イーガンは仲間とともに怪しげ
な動きをはじめる…
 警察の汚職に翻弄される警察一家を描いた暗く重いハードボイル
ド・サスペンス。


レビュー

 兄の部下の警察官4人が殺された事件を追うレイは数年ぶりの現
場復帰となる。彼が現場を離れたきっかけは数年前のある事件、そ
の事件がどのようなものであったのかは徐々に明らかになる。そし
て、レイは事件の核心に近づいていくのだが、同時に彼の義理の弟
ジミーがその事件に深くかかわっていることを示唆するプロットも
展開される。ジミーはその殺人事件の犯人を殺して金を奪うために
4人を派遣したのだという。そして彼の悪事はそれにとどまらず…

 話のほうはとにかく暗い。数年前の事件によってレイは妻と近々
離婚することになっているし、兄で31分署長のフランシスの妻は事
件とは関係ないが重い病気で死期が近い。LAPDの部長である父
も酒が手放せなくなっている。

 そして明らかになっていくのはジミーとその仲間の非道ぶり。た
だヤクの売人とつるんでいるというだけでなく、彼とその仲間は証
拠隠滅から脅迫、強盗、殺人まで犯すという非道ぶり。その行動は
本当に“ひどい”の一言に尽きる。警察官として以前人間として本
当に極悪なのが彼らだ。

 しかしそんな彼らも警察官、警察として彼らをどうするのかとい
うことが、その警察という組織とともに生きてきたティエリー家に
重くのしかかる。

 この映画は犯人探しのサスペンスもなければ、登場人物の心の葛
藤が描かれているわけでもない。だから謎解きとしての面白さとか
スリルというものはないし、人間の心理を描いた深みがあるわけで
もない。しかしそれなりに観れるのは、事実を積み重ねることによっ
てそこにある現実の冷たさが浮き上がってくるからだろう。

 ここに登場する誰もが不満や怒りを抱え、いったいそれにどう対
処していいのかと途方にくれたり、開き直ったり、迷ったりしてい
る。現実とはかくも冷たいもので、人々は常に何らかの不満に対処
していかなければならない。まあ、わざわざ映画にそのことを思い
出させてもらわなくってもいいという気もするが、そのような現実
が描かれていることでこの作品は観るものをひきつけることができ
るのだろう。

 しかし、観終わって「面白かった」という感想を漏らすことはで
きない。最後まで見てしまいはするが、苦痛にも近いつらさを感じ
もする。こういうのもありだし、エドワード・ノートンはなかなか
いいわけだが、万人に勧めることはできない映画だ。



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<今日の作品:プライド・アンド・グローリー>

 『プライド・アンド・グローリー』
  http://bit.ly/91qUof


<今日のお勧め>

 エドワード・ノートンをば

 『ファイト・クラブ [Blu-ray]』
  http://bit.ly/5LPlan

 『25時』
  http://bit.ly/6AxsxP

 『インクレディブル・ハルク』
  http://bit.ly/4oPgF7

 『幻影師 アイゼンハイム』
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2009年12月24日

[ほぼ日刊日々是映画] vol.2678 ★ ベルサイユの子

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2678号です。

今日はクリスマス・イヴなんでございますよ。
まあ、仕事の人も多いとは思いますが、なんか楽しいことができる
といいなという感じです。
イベントってのは楽しむための口実ですから。

ここから年末までのあわただしさを乗り切ったら、少しのんびり。
ゆっくりとDVDでも見て過ごしたいものです。
というわけで、このタイミングで楽天レンタル無料おためしなど
どうかと考えてみたり↓
http://tinyurl.com/2d67dk

さて、今日は『ベルサイユの子』です。イヴにふさわしからぬ深刻
な映画でしたが… まあ面白かった。

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■ 今日の映画
 ベルサイユの子

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■ 今日の映画 − ベルサイユの子

<1行コメント>
ギョーム・ドパルデューが疎外感を感じる人々に送る最後のメッセージ


--cinema2548------------

 ベルサイユの子

 Versailles
 2008年,フランス,113分

-----------------------

<キャスト&クルー>

監督 ピエール・ショレール
脚本 ピエール・ショレール
撮影 ジュリアン・イルシュ
音楽 フィリップ・ショレール

キャスト ギョーム・ドパルデュー
     マックス・ベセット・ドゥ・マグレーヴ
     ジュディット・シュムラ
     パトリック・デカン

<評価>

☆☆☆1/2 (満点=5)


<プレビュー>

 幼い息子エンゾを連れたホームレスの若い母親ニーナはある夜ベ
ルサイユの森の中にあばら家を建てて暮すダミアンに出会う。ニー
ナはエンゾとダミアンが寝静まっている間にグルノーブルへ行き、
職に就く。ダミアンはエンゾと暮し始めるが…
 社会の底辺に生きる人々を描いた人間ドラマ。2008年に37歳の若
さで急逝したギョーム・ドパルデューの遺作となった。


レビュー

 幼い息子を連れたホームレスのニーナ、立ち直るきっかけを捜し
求めるが、その道は険しい。ベルサイユの森で暮すダミアンは世捨
て人じみたところがあり、その森のホームレスのコミュニティの中
で安穏と暮しているような印象もある。ニーナは本当に立ち直るた
め息子エンゾをダミアンのところに置き去りにし、遠くグルノーブ
ルに職を求める。ダミアンは仲間の死、周囲からの嫌がらせを受け
てエンゾをつれて実家に戻る決意をする。

 この映画がまず描くのはホームレスの人々に対する社会の厳しい
視線だ。ホームレスの人たちの中にもそこから這い上がろうと努力
している人だっていっぱいいるのに、そういう考えはなかなか受け
容れられない。人々はなるべくホームレス達から目をそらそうとす
る。そこには軽蔑とともに、自分がそうなる可能性から目をそむけ
ていたという無意識も含まれているのかもしれない。

 そのようにしてホームレスは社会から無視され、係わり合いを持
とうとすると拒否されるわけだが、そこに子供が絡んでくると少し
事情が変わってくる。“まっとうな”人たちはホームレスに子供が
育てられるわけはないと考えるわけだが、ホームレスであっても子
供(自分の子供であろうともなかろうとも)に対して抱く思いは変
わらない。

 この物語の最終的な中心になるダミアンとダミアンの家族(主に
父親)とエンゾとの関係、そこに見えてくるのは“社会”によって
歪められる人間同士の関係である。社会というのはもちろん人間同
士の関係によって成り立っているものな訳だけれど、それが巨大化
し、複雑化してゆくと、本来の人間同士の関係を逆に歪める。そん
なことがこの作品からは見えてくるのだ。“社会”が押し付ける常
識というヤツとダミアンとエンゾの関係性の間の齟齬、そこから見
えてくるものはたくさんある。

 ホームレスの人たちというのは、この社会との間に齟齬を感じ、
疎外感を感じている人たちなのだろう。その原因はさまざまであり、
「ホームレス」といっしょくたに考えること自体が問題をより根深
いものにしてしまっているという感想をこの作品から持った。そも
そもホームレスを「ホームレス」と総称してしまう社会の構造から
考えていかないと、なぜ今の社会がこのように歪み、軋み、崩れ落
ちようとしているのかは理解できないのかもしれない。

 この作品の結末を見ると、社会というのは依然として非情で、人
と人とのつながりというのは小さなコミュニティの中でも親密なか
かわりの中でしか生まれないのだと思える。そのような非情な社会
の中で生きるということ、この作品が投げかけるのはそんな重いテー
マだ。

 薬物などの問題を起こし、バイク事故で右足を失うという経験も
し、37歳で夭逝したギョーム・ドパルデュー、遺作となったこの作
品の彼の姿からは生きていくことのつらさがにじみ出る。



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<今日の作品:ベルサイユの子>

 『ベルサイユの子』
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<今日のお勧め>

 ギョーム・ドパルデュー

 『ポーラX』
  http://tinyurl.com/yh3q2wp

 『天使の肌』
  http://tinyurl.com/yzwdem6

 『ランジェ公爵夫人』
  http://tinyurl.com/ykckx4h


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2009年12月22日

[ほぼ日刊日々是映画] vol.2677 ★ 彼女の名はサビーヌ

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2677号です。

歳も押し詰まり、2010年まであと10ほどとなりました。そりゃ
忙しいはずだ。
年末年始はのんびりと過ごせると思いたいところですが、来年は
2,3が土日ということであっという間に平日に…

まあ、正月は正月なので、のんびりしましょうね。
正月のんびりのために今買っておくべきはズバリみかん
わけあり有田みかんで美味しくお得にお正月
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でも、本当は、りんごのほうが好きです… 特にサンふじ
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美味しい果物で、楽しいお正月を。

さて、今日は『彼女の名はサビーヌ』です。

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■ 今日の映画
 彼女の名はサビーヌ

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■ 今日の映画 − 彼女の名はサビーヌ

<1行コメント>
自閉症の妹を見つめる視線を通して「他者」との付き合い方を考える。


--cinema2548------------

 彼女の名はサビーヌ

 Elle s'Appelle Sabine
 2007年,フランス,85分

-----------------------

<キャスト&クルー>

監督 サンドリーヌ・ボネール
脚本 サンドリーヌ・ボネール
   カトリーヌ・カブロル
撮影 サンドリーヌ・ボネール
   カトリーヌ・カブロル
音楽 

キャスト サビーヌ・ボネール
     サンドリーヌ・ボネール

<評価>

☆☆☆1/2 (満点=5)


<プレビュー>

 サビーヌは子供のころから自閉症だったが、成人になり病院に入っ
たころからその症状が悪化、現在は自閉症患者専門の施設で暮して
いる。
 そのサビーヌの姉で女優のサンドリーヌ・ボネールが妹の日常を
記録し、彼女がまだ若かった頃のホームビデオを織り交ぜて自閉症
の妹の半生を描き出す。


レビュー

 中年に差し掛かったサビーヌは自閉症者専用の施設で暮らす。そ
の行動は気まぐれで、しかも時には暴力を振るったり、物を投げた
りという行動を取る。妹で女優のサンドリーヌはそんな妹にカメラ
を向ける。それだけでは単に、障害を持つ家族を記録したビデオに
過ぎないわけだが、この作品にはそれに加えてサビーヌが若かった
頃のホームビデオの映像も織り交ぜられる。その頃の彼女はまだ症
状が軽く、家族と過ごしている限りはごく普通に過ごせていたらし
い。映像の上でもかわいらしい若い女性がニコニコと笑っている。

 この映像の対比によってこの作品は力を持つ。若かった頃の彼女
と今の彼女、その変化の持つ意味とは。サンドリーヌはその原因を
妹が他の兄弟と離れて暮すようになったこと、5年間の精神科への
入院に求める。とはいっても病院を責めるわけではない。その原因
や進行の仕方がよくわかっていない自閉症の症状の変化を冷静に見
詰めようとしているだけだ。

 この作品を見ていえる感想は当たり前のことばかりかもしれない。
自閉症の人たちと付き合うのは大変だ。しかし、彼らには感情や愛
情がしっかりとあり、ちゃんと接してあげればちゃんと答えてくれ
る。

 そして、そのことから思うのは、彼らが私たちにとって最も身近
にいる「他者」であるということだ。同じ事を見て、同じようにそ
れを処理しているはずなのに、それが体を通って表面に表れるとき
には違う形態をとる。サビーヌのいる施設のセラピストが語ってい
た「彼らはほかに不満などの感情の表現の仕方を知らない」という
言葉が印象的だ。

 「他者」とは相互理解が成立しない相手のこと、表現方法が異な
る自閉症者は私たちにとっては通常は「他者」だ。しかし、この作
品を見るとその「他者」である人たちとの相互理解こそが重要だと
思える。ただ、その過程は難しいもので私たちはその役割をここに
登場するセラピストのような人たちに任せてしまっている、たとえ
家族であってもだ。

 みんながそのような相互理解への道を歩む必要はもちろんない。
しかし、理解できない、怖い、といった感情によって彼らを拒否す
ることは避けなければいけない。人は理解できないものを拒否しが
ち、そのことを肝に銘じるだけのためでもこの映画を見る価値はあ
る。

 基本的に妹を撮っただけのこの映像に、そのような示唆が含まれ
るのはこの作品の編集が秀逸だからだ。現在と過去の対比の中に現
れる隔たりと共通項。前半では隔たりばかりが目立つが、後半では
表情や眼差しに現在と過去の共通点が見えてくる。それは病気の兆
候が昔からあったことと、今でもサビーヌはサビーヌであるという
ことの両方を意味する。

 見ると結構気持ちが沈むけれど、その現実に目を向けなければな
らない。



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<今日の作品:彼女の名はサビーヌ>

 『彼女の名はサビーヌ』
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<今日のお勧め>

 サンドリーヌ・ボネール出演作も

 『灯台守の恋』
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 『親密すぎるうちあけ話』
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 『嘘の心』
  http://tinyurl.com/ydh3fcd

 『仕立て屋の恋』
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2009年12月19日

[ほぼ日刊日々是映画] vol.2676 ★ バンク・ジョブ

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2676号です。

伊豆で群発地震のようで、そちら方面の人は大変でしょうね。
私も一度、群発地震のときに伊豆にいたことがありまして、夜も
何時間か起きに揺れるんで寝不足になりました。

まあ、慣れてらっしゃるので、対策はたっているとは思うのです
が、くれぐれもお気をつけください。東京もちょこちょこ揺れる
くらいの地震ですから、大変でしょう…

地震といえば、防災対策は大事ですので、ここでも定期的に書い
たりしております。年末ということもありますので、今一度チェッ
クをしていただきたいところです。
特に食品は賞味期限がありますので、そちらのチェックをお忘れ
なく。起源間近なものは食べてしまって、新しいものを買いましょ
う。
最近はいろいろな味が楽しめる缶詰なんかもあるみたいです↓
http://tinyurl.com/yg9xetd
水も長期保存が可能なものをどうぞ↓
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今日は『バンク・ジョブ』です。
痛快!

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■ 今日の映画
 バンク・ジョブ

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■ 今日の映画 − バンク・ジョブ

<1行コメント>
実話がもとの痛快アクション!野郎向けのエンターテインメント。


--cinema2547------------

 バンク・ジョブ

 The Bank Job
 2008年,イギリス,110分

-----------------------

<キャスト&クルー>

監督 ロジャー・ドナルドソン
脚本 ディック・クレメント
   イアン・ラ・フレネ
撮影 マイケル・コールター
音楽 J・ピーター・ロビンソン

キャスト ジェイソン・ステイサム
     サフロン・バロウズ
     リチャード・リンターン
     スティーヴン・キャンベル・ムーア
     ダニエル・メイズ

<評価>

☆☆☆☆ (満点=5)


<プレビュー>

 1971年ロンドン、中古車屋を営むテリー・レザーは借金に悩まさ
れていた。そこに幼馴染のマルティーヌが現れ、銀行強盗の話を持
ちかける。金が必要なテリーはそれに載るが、実はマルティーヌは
諜報機関の差し金で、諜報機関が頭を悩ませているマイケルXの持
つ“秘密の写真”を奪うのが本当の目的だった…
 イギリスで実際に起きた事件をモチーフにしたクライム・サスペ
ンス。犯人達や捜査機関などさまざまな利害が入り組み複雑な展開
を見せるストーリーが魅力的。


<レビュー>

 素人に毛の生えた程度の小悪人達がうまく乗せられて、MI−5
だかMI−6だかの諜報機関主導の銀行強盗計画の実行犯になって
しまう。その計画は見事に成功し、彼らは大金と諜報機関の目的で
ある写真を手にするのだが、実行犯のリーダーであるテリーはその
写真こそが話を持ちかけてきたマルティーヌの狙いであることを見
抜く。さらには他にも公にされると困る写真は帳簿なども盗まれた
中に含まれており、彼らはさまざまな方面から脅迫を受けることに
なる。

 実行犯を中心に盗まれた品に利害関係のある諜報機関、警察、ス
トリップクラブ経営者、国会議員などなどが複雑に絡み合い、仲間
の一人が誘拐されたり、襲われたり、さまざまな危機が彼らを襲う。
テリーがそれをどうさばきうまく乗り切るのか… さらにはテリー
とマルティーヌの関係も絡んできて…

 観客はすべてを見通せる立場におかれるが、すべてはテリーの立
場からどう見えるかという観点から組み立てられている。したがっ
て自然とテリーに感情移入するように仕向けられる。このテリーが
なかなか魅力的な人物なので、それでたいがいの人は気持ちよく映
画を見ることができるだろうし、スピード感があるので瑣末なこと
に煩わされずに物語に入り込むことができるだろう。

 ただ、この物語は男に都合がいいように組み立てられているので
そういうマッチョな考えが生理的に受け付けられないという人には
「ちょっとなー」という映画なのかもしれないとも思う。

 これは基本、事実に基づいているということだが、別にそれはど
うでもいい。普通は実際にあった事件が元になっていることで説得
力が増したり、へーと感心したりするものだが、この映画に関して
はこれがまったくの作り物であっても面白く観られると思う。まあ
実際のところすべてが明らかになっているわけではないだろうから、
ある程度は想像が入り込んでいるわけで、素材もよかったのだろう
けれど、空白を想像で埋めるそのやり方がうまかったんだろうなぁ
と思う。

 本当に完全にエンターテインメントの痛快クライム・サスペンス。
観終わっても何も残らないけれど、こういう作品はストレス解消に
なる。複雑なプロットを持つサスペンスっていうのは疲れそうだけ
ど、実はそうではない。その展開を整理してその先を読むのに頭が
いっぱいになって、ほかの事を考えられなくなることで、普段の志
向がリセットされるようにすっきりする。

 頭を悩ませることが多くて疲れてしまったら、こんな映画を見る
のがいい。



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<今日の作品:バンク・ジョブ>

 『バンク・ジョブ』
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<今日のお勧め>

 渋い魅力のジェイソン・ステイサムを

 『トランスポーター
  http://tinyurl.com/y9bszrk

 『デス・レース』
  http://tinyurl.com/dlu5f5

 『アドレナリン』
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 『ゴースト・オブ・マーズ』
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2009年12月18日

[ほぼ日刊日々是映画] vol.2675 ★ ウイグルからきた少年

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2675号です。

毎日毎日寒いですなこりゃ

昨日はAR(拡張現実)というのをちょっと体験しました。
何でもNHKでも先日取り上げられたとかなんだかでこちら↓
http://ar3.jp/
を見るとちょっとわかるかもしれません。

先日IKEAがARカタログなんてものを発表したりして、ARが
今熱いみたいです!
http://www.monogocoro.jp/2009/12/14/ikea-augmented-catalogue.html

考えてみればWiiもARのひとつかもしれません。握っている
コントローラーが画面の中ではゴルフクラブになったりするわ
けですから。
Wiiちょっと欲しいな
光回線契約するとWiiが無料とか何とか…
http://tinyurl.com/ydjug9q

今日は『ウイグルからきた少年』です。

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■ 今日の映画
 ウイグルからきた少年

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■ 今日の映画 − ウイグルからきた少年

<1行コメント>
目に見えないウイグルに目を向けるが、映画としてはちょっと…


--cinema2547------------

 ウイグルからきた少年

 Yashi
 2009年,日本=ロシア=カザフスタン,65分

-----------------------

<キャスト&クルー>

監督 佐野伸寿
   ヌルムハンベトフ・エルラン
脚本 佐野伸寿
撮影 ボリス・トロシェフ
音楽 

キャスト ラスール・ウルミリャロフ
     カエサル・ドイセハノフ
     アナスタシア・ビルツォーバ

<評価>

☆☆ (満点=5)


<プレビュー>

 カザフスタンで共同生活をする3人の子供、盗みをして小銭を稼
ぐカエサル、工事現場で働くウイグル人のアユブ、少女売春をする
ロシア人の少女マーシャ。アユブは元締めの男に声をかけられてつ
れてゆかれ、山間の村落で母親のためだといわれて自爆テロのため
の訓練を受け始める…
 自衛官の佐野伸寿がウイグルの存在を知って欲しいとメガホンを
取り、フィクションとして撮り上げた。


レビュー

 言いたいことはわかる。先だってのウイグルでの暴動がニュース
になったけれど、実際のところウイグルというのが何なのかはっき
りわからないという人も多い。そんなウイグル人の少年が両親と引
き裂かれ、一人カザフスタンに逃れる。そしてその少年を利用しよ
うという大人がいる。そういう世界の現実に目を向けることは重要
なことだ。

 しかしこの映画は果たしてそのことを語っているだろうか? ま
ずこの作品の舞台がカザフスタンであるということが非常にわかり
にくいし、ウイグル人の少年は「中国」から来たといわれるだけで、
中国におけるウイグル人の立場がどのようなものかということは説
明されない。その辺りが説明されないと、この作品の狙いと思われ
る「ウイグル人についての知識を深める」という目的は達せられな
いのではないか? この作品でわかるのはウイグル人がムスリムで
ムジャヒディンとつながっていること。そしてカザフスタンでも差
別あるいは迫害されているということだ。

 そしてこの映画に不満を持つ更なる理由は映像のお粗末さだ。前
半はまあいい。少年たちの日常を移しただけだからだ。しかしアユ
ブが自爆テロのための訓練を始めるシーンなどはどうだろう?何も
わからない少年が一人で銃を持って駆け回ることに何の意味がある
のか?ほかに訓練を受けているものもいなければ教官もいない。こ
れは一体何なのか。

 そして極めつけはクライマックスとなるアユブが爆弾をまきつけ
て街へとでるシーンだ。いつ爆発させるのか時を持たせながら、街
をうろつく彼を追い続けるのはかまわないし、その長さも緊張感を
増す効果があるのなら問題はない。しかし、このシーンで明らかに
無関係な人たちがカメラに反応するところが映ってしまっている。
アユブとすれ違う人たちが明らかにカメラを見ているのだ。

 この映画はフィクションだ。フィクションだということはカメラ
は存在しないことになっている。カメラ=観客の目はそこで演じら
れている“劇”の外部になければいけない。ドキュメンタリーの場
合は必ずしもそうではない。観客はカメラとともにその場に赴き、
時にそこにいる人たちの視線にさらされることがあってもいいのだ。
なぜならドキュメンタリーとは現実をカメラによって切り取ったも
のであり、カメラもまたその現実の一部であるのだから。

 しかしフィクションの場合はカメラの前で演じられたことがすべ
てのはずで、そこにカメラが含まれていてっはいけない。メタフィ
クション的な効果を狙った場合にはその限りではないが、この作品
はどう考えてもそうではなく、ただゲリラ撮影的に撮った映像で無
関係な街の人々がカメラを注視してしまったというだけだ。この瞬
間にこの作品はフィクションとしての体をなさなくなり、世界は瓦
解する。

 言いたいことはわかるが、これは映画として成立していない。だ
からと言って見る価値がないことにはならないけれど。



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<今日の作品:ウイグルからきた少年>

 『ウイグルからきた少年』
  http://tinyurl.com/ygkotea


<今日のお勧め>

 アジアの若者たち?

 『風の馬』
  http://tinyurl.com/yhglo3g

 『ヒマラヤを越える子供たち』
  http://tinyurl.com/bwvugx


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2009年12月16日

[ほぼ日刊日々是映画] vol.2674 ★ キング・コーン 世界を作る魔法の一粒

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2674号です。

今日はなかなか時間に追われておりますので、すぐに映画で!

今日は『キング・コーン 世界を作る魔法の一粒』です。

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■ 今日の映画
 キング・コーン 世界を作る魔法の一粒

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■ 今日の映画 − キング・コーン 世界を作る魔法の一粒

<1行コメント>
コーンから見えてくるアメリカ社会の農業と経済の病。


--cinema2546------------

 キング・コーン 世界を作る魔法の一粒

 King Corn
 2007年,アメリカ,90分

-----------------------

<キャスト&クルー>

監督 アーロン・ウールフ
脚本 イアン・チーニー
   カート・エリス
   ジェフリー・K・ミラー
   アーロン・ウールフ
撮影 イアン・チーニー
   サム・カルマン
   アーロン・ウールフ
音楽 

キャスト イアン・チーニー
     カート・エリス

<評価>

☆☆☆1/2(満点=5)


<プレビュー>

 親友のイアンとカートは食生活について調べるうち自分の体のほ
とんどがコーンでできていることを知る。ふたりはコーンについて
もっとよく知るためアイオワに1エーカーの土地を借りてコーン栽
培をして見ることに。その過程でアメリカのさまざまな側面が見え
てくる…
 コーンからアメリカ社会を見るインディペンデント系ドキュメン
タリー。軽そうなイメージとは裏腹に重いテーマをじっくりと考え
させる。



レビュー

 髪の毛の分析結果から自分の体のほとんどがコーンで出来ている
ことを知ったイアンとカート、別にとうもろこしばかりを食べてい
るわけではなく、コーンが原材料のさまざまな食料品を食べている
し、食肉の飼料もほとんどがとうもろこしだからだという。そこで
イアンとカートはコーンを育てて見ることに。

 現在の農業は完全に産業化し、農地は広大に機械も巨大に、収量
は飛躍的に増えている。彼らが体験する農業を見て驚くのはすべて
がきっちりと計算されて生産されていることだ。化学肥料の量、植
えつける間隔、除草剤をまくときの機械のスピードなどすべてが計
算され、その通りやれば誰にでも同じとうもろこしが出来るという
のだ。しかも1エーカー(4047m2)の植え付けはわずか18分、遺伝
子組み換えにより特定の除草剤に対する耐性が出来ているので除草
剤の散布も1種類をほんの数回撒けばいい。

 そのあまりのオートメーション化に驚きはするが、まああくまで
も予想の範囲であり、この作品の焦点はそこにあるわけではない。
ここで重要になるのはアメリカでのコーンの生産量がとてつもなく
過剰であるということだ。作られるコーンのうちそのまま人の口に
入るものはほとんどなく、大部分は飼料になったり、さまざまなも
のに加工される。

 まずふたりが向かうのは牧場だ。ここで牛たちはコーンを食べさ
せられ、太らされわずか半年で食肉となる。牛は本来というもろこ
しを食べないが、これを食べさせることによってあっという間に成
長するので早く出荷できるというわけだ。しかし牛の胃には負担が
かかるので抗生物質を与えることになる。うーん…

 次に注目したのは高果糖コーンシロップ、あらゆる食べ物に入っ
ているこの甘味料を実際に作ってみる。そしてニューヨークへ行き、
これが現代人の肥満や糖尿病の原因となっていることを知る。(こ
のコーンシロップというのは実は日本で開発された技術らしく、日
本で果糖ブドウ糖液糖やブドウ糖果糖液糖と呼ばれているものもコー
ンシロップらしい。果糖は砂糖より甘味度が強く、低温下で甘味度
をます。また砂糖より吸収されやすい)

 そして実ったとうもろこしを食べてみた二人はそのまずさに驚く。
現在のとうもろこしはもはや食糧ではなくさまざまな製品の原材料
に過ぎない。そして、そのようになったのは1970年の政策の転換に
あるというのがこの映画の最後の展開だ。その転換とは食糧生産の
拡大、農家にお金を払って生産を拡大させる、その結果がこのあま
りに過剰なとうもろこしの生産につながった。

 それがいいのか悪いのかの判断は最終的にはなされていない。そ
れは見る人それぞれが考えるべきことだ。

 この作品で一番印象的だったのはさまざまなものの密度である。
とうもろこし農家の一人がトウモロコシ畑を「コーンの都市」と呼
ぶ。とうもろこしはそれほどまでに濃い密度で植えられ、それでも
育つ。そして牛も狭い場所に詰め込まれている。ニューヨークは人
と車がひしめき合っている。あれだけ広いアメリカで、どこでもこ
こでも生き物がひしめき合っている、果たしてそんな社会でいいの
かどうか、そこが大いに疑問だ。1970年に農業政策の大転換がなさ
れたとこの作品はいう。それから約40年、そろそろ次のパラダイム
シフトが起きてもいい、私はそんな風に思った。



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2009年12月15日

[ほぼ日刊日々是映画] vol.2673 ★ 座頭市関所破り

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2673号です。

週末食べた壱岐から直送のブリしゃぶが大変おいしぅございまし
た。ブリしゃぶって初めて食べましたが、美味しいものなんです
ね。天然ぶり、お値段は張りますが、年末あたり奮発して食べて
もいいかもしれませんよ!

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贅沢で満足な年末年始には天然ブリを一匹ですよ!!

今日は久々座頭市『座頭市関所破り』です。

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■ 今日の映画
 座頭市関所破り

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■ 今日の映画 − 座頭市関所破り

<1行コメント>
変わらぬ座頭市の魅力! 痛快、爽快、格好いい!


--cinema2545------------

 座頭市関所破り

 1964年,日本,86分

-----------------------

<キャスト&クルー>

監督 安田公義
原作 子母沢寛
脚本 浅井昭三郎
撮影 本多省三
音楽 小杉太一郎

キャスト 勝新太郎
     高田美和
     滝瑛子
     平幹二朗
     河野秋武

<評価>

☆☆☆1/2(満点=5)


<プレビュー>

 妙義山のご来光を拝もうと笠間の宿へ向かう市は旅人に笠間の旅
籠むさし家の女中お仙に文を頼まれる。その笠間では強欲な代官ら
人々は苦しめられていた。市はむさし家でそんな代官らの行状を直
訴するために旅立った庄屋の娘お咲に出会う…
 勝新主演「座頭市」シリーズの第9作、名の知れた存在になった
市をめぐって練られた脚本がいい。


<レビュー>

 座頭市はヤッパリ格好いい。勝新が格好いいというよりは座頭市
が格好いい。もちろんその座頭市というのは勝新が演じていなけれ
ばならないので、結局のところ勝新が演じる座頭市が格好いいとい
うことなのでけれど、言いたいことを的確に表現するならば「(当
然のことながら勝新が演じている)座頭市が格好いい」ということ
だ。

 市のやや前かがみの立ち方、少し後掲しがに股で歩くその歩き方、
時にうっすらと瞼を持ち上げる表情、第9作に当たる今作ではそれ
らすべての立ち居振る舞いがすでに完成されている。市は市、それ
以外の何者でもないキャラクターとして確立されているのだ。

 そんな市を主人公にしたこのシリーズに失敗作は生まれない。マ
ンネリ化はするかもしれないが、座頭市がいる限り失敗作にはなら
ないのだ。この作品を見てそのことを確信した。実際、映画だけで
25作を数えるこのシリーズに失敗作はない(見た限りでは)。

 というわけで座頭市がいればそれでいいのだが、それでもやはり
しっかりとシナリオを練ってくるのもまたいいところ。悲劇のヒロ
インが登場し、ライバルの剣士が登場するという展開はワンパター
ンで、どんな展開になるのかは大体わかるわけだが、それでもその
ヒロインが最後にどんな運命に導かれるのか、ライバルとの関係が
どうなるのかは最後までわからない。偉大なマンネリの中で展開さ
れる小さなバリエーション、これがシリーズの面白さだ。

 というわけであとは見ろ!としか言いようがないし、何を書いて
もシリーズのほかの作品と変わらない内容になってしまうわけだが、
今回はいい斬られ役がひとり目に付いたのでそのことを。こういう
映画で斬られ役なんてものは目立っちゃいけないわけだけれど、今
回は一人アップでとらえられる斬られ役の表情がよく、それが印象
に残った。その表情は決して大げさではなく驚きを示したものだっ
た。座頭市は座頭市として名を知られてもやはり座頭ということで
どこかでなめられているのかなとその斬られ役の表情を見てふと思っ
たりもした。

 でも、もしオレが悪代官の手下だったらとっととけつまくって逃
げ出すけどね!絶対一太刀で斬られることがわかってるんだもの!


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<今日の作品:座頭市関所破り>

 『座頭市関所破り』
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<今日のお勧め>

 座頭市ですよ!

 『座頭市 DVD-BOX』シリーズから16作
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 『座頭市と用心棒』
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 『新座頭市 破れ! 唐人剣』
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 『座頭市物語 DVD-BOX』TV版
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2009年12月14日

[ほぼ日刊日々是映画] vol.2672 ★ パチャママの贈りもの

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2672号です。

寒くなってきまして、年末という感じ。
何せ今日は赤穂浪士討入の日ですから。

依然として風邪、インフルエンザ等はやっておるようですので、
皆様お気をつけください。

今日はちと早いですが、今週末公開の『パチャママの贈りもの』で
す。

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■ 今日の映画
 パチャママの贈りもの

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■ 今日の映画 − パチャママの贈りもの

<1行コメント>
ボリビアの先住民の暮らしをわかりやすく、風景と人々が素晴らしい。


--cinema2545------------

 パチャママの贈りもの

 El Regalo de la Pachamama
 2009年,日本=アメリカ=ボリビア,102分

-----------------------

<キャスト&クルー>

監督 松下俊文
脚本 松下俊文
撮影 グスタホ・ソト
   ギジェルモ・ルイス
   カルロス・クレスポ
   セサル・ペレス・ウルタド
音楽 ルスミラ・カルピオ

キャスト クリスチャン・ワイグア
     ルイス・ママーニ
     ファニー・モスケス
     ヒラリア・カブレラ
     フランシスコ・ラソ

<評価>

☆☆☆(満点=5)


<プレビュー>

 7ボリビアのウユニ塩湖近くに暮らすコンドリの一家は代々、塩
湖から塩を切り出し、キャラバンで山間の村々に届けるという仕事
を続けてきた。13歳になったコンドリは祖父に代わって初めて父と
ともにキャラバンに出ることに。そして少年はさまざまの初めての
体験をすることになる…
 ニューヨークで映画を学んだ松下俊文が6年の歳月を完成させた
初の長編作品。ボリビアの風景と人々の笑顔がさわやかな小品。


レビュー

 この作品に描かれているのは、古きよき共同体精神、助け合いの
心、そして思いやりである。偶然出会った見知らぬ人同士でも無償
で助け合うという心、助けられた人はまた別の人を助け、それが連
鎖してゆくことにより自然に助け合うという関係が生まれる世界、
それが文明からかけ離れた素朴な風景の中にある。それだけでこの
作品の持つメッセージは明らかだ。

 そしてそれにも増して私たちに訴えかけてくるのがその風景だ。
果てしなく白く広がる広大な塩湖や色とりどりの山間の里、加えて
チチャ酒、リャマ、キヌア、コカといった独特の文化、それらにエ
キゾチックな魅力を感じずに入られない。

 そして、ここに登場する人々が大切にする共同体社会は古きよき
日本の地域共同体を思い起こさせ、ノスタルジーにも似た心地よさ
を醸し出しもする。表面上は異なっていながらも根底の部分では共
通する部分を持つという人間として共感しやすい環境を作ってボリ
ビアとボリビアの先住民のことを日本人に伝える。そのような作品
としてはこの作品はいい。

 まあしかし、日本人がボリビアを描いているわけだから、その表
現が日本人にとってわかりやすいボリビアになるのは当然のことで、
それだけでは映画としてやはり弱い。

 そこで、超現実的世界というもうひとつの要素が絡んでくるわけ
だ。たとえば行動内に突然現れる悪魔の像、夢という形で実を結ぶ
神々の世界、人間に姿を変える鳥、それらがあらわすのはラテンア
メリカ世界特有の現実と非現実(と西欧で呼ばれるもの)、この世
界と死者の世界との連続性を表しているのだろう。その連続性はマ
ジックレアリズムという形でラテンアメリカ特有の芸術/文化となっ
ており、この映画もそのマジックレアリズムを引用している節があ
るのだが、その部分がうまく描かれているとはなかなか言いがたい。

 ボリビア映画といえばまず思い出されるのはウカマウである。こ
の映画と同じく、先住民を出演者としてセミ・ドキュメンタリーを
制作した。しかも、ウカマウ集団はラテンアメリカ的マジックレア
リズムを大胆に利用し、現実と非現実の境を取り払い、どこか幻想
的でありながらリアルでもある世界を描いた。それと比べるのはか
わいそうといえばかわいそうなのだが、それを見てしまうとこの作
品が力強さに欠けると感じてしまうのだ。

 この作品も日本人にわかりやすいボリビア理解から一歩進んだ文
化の深みのようなものを伝えてくれれば素晴らしい作品になったの
ではないか。わかりやすいのもいいが、複雑でわかりにくいところ
にこそ真実は隠されているのだから。



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<今日の作品:パチャママの贈りもの>

 『パチャママの贈りもの』公式サイト
  http://www.pachamama-movie.com/


<今日のお勧め>

 いろいろ

 「アンデスで先住民の映画を撮る」
  http://tinyurl.com/ycw7z75

 『世界遺産 【ペルー/ボリビア編】』
  http://tinyurl.com/ydqv3fp


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2009年12月12日

[ほぼ日刊日々是映画] vol.2671 ★ 懺悔

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2671号です。

年の瀬まであと少し、帰省や旅行をされる方も多いと思いますが、
そんな時、デジカメのメモリがいっぱいになって困った!なんて
ことがあるかもしれません。
そんなときに便利なのがwifiを内蔵したSDカード。wifi環境のあ
るところ(マクドナルドなど)にいけば、簡単に写真をアップロー
ドしてネット上のストレージに保管して置けます。
これで、またがんがん写真が撮れるわけです。

というのが“Eye-Fi”という商品

いまなら2000円オフ!というキャンペーン中だそうです。
http://tinyurl.com/y9zpfvv

まあ、まずはいいカメラが欲しいんですけどね…
こんな程度でいいんですよ、こんな程度で↓
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今日はソ連時代のグルジア映画という『懺悔』です。


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■ 今日の映画
 懺悔

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■ 今日の映画 − 懺悔

<1行コメント>
過去を批判し、グルジアから映画のペレストロイカが始まる。


--cinema2545------------

 懺悔

 Monanieba
 1984年,ソ連,153分

-----------------------

<キャスト&クルー>

監督 テンギズ・アブラゼ
脚本 テンギズ・アブラゼ
撮影 ミヘイル・アグラノヴィチ
音楽 ナナ・ジャネリゼ

キャスト アフタンディル・マハラゼ
     ゼイナブ・ボツヴァゼ
     エディシェル・ギオルゴビアニ
     ケテヴァン・アブラゼ

<評価>

☆☆☆(満点=5)


<プレビュー>

 皆に愛された市長のヴァルラムが亡くなった。市民たちは悲しみ
にくれるが、埋葬の翌日からヴァルラムの遺体が掘り起こされ家に
戻されるという事件が3晩続く。警察が出動しヴァルラムの孫によっ
て捕らえられた犯人ケテヴァンは裁判の席でヴァルラムを安らかに
寝かしては置けない理由を語り始める…
 ソ連時代のグルジアで制作された社会派ドラマ。体制批判的な映
画が公開されたことでペレストロイカの象徴的な存在となり、ソ連
各地で多くの観客を動員した。


<レビュー>

 市民のための施政をひいてきたと思われていたヴァルラムの死後、
彼の遺体が幾度も掘り起こされるという事件が起こり、その裁判の
中で彼の生前の行状が明らかになっていく。根拠のない誹謗中傷を
もとに無実の(と思われる)人々を逮捕し、無理やりに罪を認めさ
せる。遺体を掘り起こした犯人の父もそんな政治の犠牲者だったの
だ。

 この映画ではそのような逮捕者が殺されるというシーンはないが、
ケテヴァンの父親で若き画家であるサンドロは行方がわからなくな
り、強制労働に従事させられているらしいということはわかる。そ
して残された家族は困窮し、最後には母親も逮捕されてしまう。はっ
きりと言われてはいないが、その理由というのがヴァルラムがサン
ドロの妻ニノに好意を持ったのも一因であることがほのめかされる。

 そんな不合理な政治が描かれるのがこの映画だ。まあしかし平和
の中に安穏と暮らしている私たちにしてみれば繰り返し語られてい
る歴史の闇を描いた映画のひとつに過ぎないという気はする。それ
ぞれのエピソードもじっくりというか慎重に描かれていてスピード
感がなく、中盤あたりからは眠気も感じてしまった。歴史の証言と
して貴重なことはわかるが…

 しかし、この映画のすごいところはこれが1984年の映画だという
ところにある。まだソ連時代のしかもグルジアという決して中心で
はないところから現れた映画が真っ向から政治を批判する。もちろ
んその政治は今現在の政治ではなく、数十年前のものではあるけれ
ど、ヴァルラムの恰幅のよさや行動はそうしてもスターリンを想起
させ、この映画がスターリン時代を批判的に振り返るものであるこ
とは誰の目にも明らかなのだ。

 ソ連では映画は政府による厳しい検閲の元で制作されてきた。そ
の体制の中でこのような映画が日の目を見たということは、体制が
そのような表現を容認したことに他ならない。

 この映画が作られたのは1984年だが、ソ連で公開されたのは1986
年。その間の1985年にゴルバチョフが書記長となり、ペレストロイ
カ(改革)とグラスノスチ(情報公開)が本格的に推進されるよう
になったのだ。

 そんな時間軸で捕らえれば、この映画がまさにペレストロイカと
いうソ連の変化の始まりを象徴的に示す映画だということがわかる。
そして、時代の空気を察していち早くこのような映画を製作したグ
ルジアの製作者の気概にも頭が下がる。この映画の監督テンギズ・
アブラゼはグルジア映画界の巨匠と呼ばれ、この作品は「祈り(68)」、
「希望の樹(77)」に続く“懺悔三部作”の最終作と位置づけられて
いる。前2作は未見だが、制作直後に公開されているところを見る
ともっと穏やかな内容なのだろう。

 そんな意味でこの映画はソビエト映画の分水嶺といえる作品なの
だと思う。ペースは遅いが決してつまらない映画ではない。こうい
うスピード感というのもある種の文化なのだろうなどとも思う。



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                     日々是映画第2671号
                     2009年12月12日発行
                     発行:cinema-today
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posted by ヒビコレエイガ at 14:02| Comment(1) | TrackBack(0) | メルマガ(仮) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする